「著しく広い土地」かどうかは一律には判断できない
前回は、広大地の適用を受け、問題が生じてしまうケースをご紹介しました。しかし逆に、図表1のように、有利になるケースもあります。
このケースでは、道路面積は全体の面積の5%程度しか必要がありませんので、土地を売却する際にも、それほど価格は安くなりませんが、広大地の適用によって、相続税の評価額は大幅に下げることができるのです。
別の問題も発生しています。広大地が適用できる条件は「著しく広い土地」ということになっています。著しく広い土地かという基準は地域によって異なります。一律に判断することは難しいものです。
例えば東京・田園調布の高級住宅地に800平方メートルの土地があった場合に「著しく広い土地」といえるでしょうか。
田園調布であれば、宅地開発をして分割しなくても、800平方メートルのままでも売却できる可能性が高いでしょう。ですから、田園調布の場合には800平方メートルの土地があっても広大地の適用は受けられません。800平方メートルで取引されることを前提に路線価も付いています。
そこで国税庁は、その地域で著しく広大な土地であるかどうかの判定の目安として、開発許可の面積を基準にするように発表しています。
宅地造成をする際には、都市計画法によって開発の許可を受けなければならないことになっています。東京都の場合は、500平方メートル以上の土地を宅地開発する際には、許可を受けなければなりません。ですから、広大地の適用も500平方メートル以上の土地にしようということになったのです。
税理士も頭を抱える「同一ルール適用」の矛盾点
そこで、多くの税理士は、当初どんな場所でも500平方メートル以上の土地であれば、広大地の適用が受けられると考えました。しかし、実際に適用してみると、広大地の適用がおかしいケースも出てきます。
例えば、2000平方メートルの土地があったとします。周りには同じくらいの広さの土地があり、マンションが立っています。ということは、2000平方メートルの土地を売却しようと考えれば、マンション業者が買う可能性が高いわけです。
マンション業者が土地を購入する時は、路線価ぐらいで取り引きされることが多いため、広大地を適用して評価を下げる必要はありません。そこで、マンション適地での広大地評価が否認されるようになりました。しかし、マンションが建つ地域か宅地分譲になる地域かはっきりしない場合はどうでしょうか。この判断はとても難しく、今、多くの税理士が悩んでいます。
また、図表2のような形で売却できる土地はわざわざ道路を入れる必要はありません。そこで道路を造る必要のない土地も否認するようになりました。
しかし、地方に行けばこのような土地には買い手がいません。「きちんと道路に接している土地のほうがいい」と考える人が大半だからです。結果、道路が必要かどうかの判断にも、多くの税理士が悩んでいます。
平成16年に広大地の適用を使いやすくしたはずが、再び判定で難しい問題が出てきているため、広大地評価の適用をせずに相続税の申告をしてしまっているケースがまた増えています。