後継者が「この会社を継ぎたい」と思う魅力がない
中小企業の後継者が見つからない問題について、記事『日本には優れた中小企業が多いのに…「後継者不在」の問題が頻発するワケ』『日本の中小企業「後継者が決まらない」納得の理由…全従業員がイエスマン、社長に熱意なし、そもそも譲る気なし』において、5つの要因を解説しました。ここでは、さらに6~8つ目の要因について詳述します。
6つめの要因としては、後継者が「この会社を継ぎたい」と思えるような魅力が会社にないというものです。
会社の魅力にはいろいろあります。「事業の将来性がある」「この会社でないとできない仕事ができる」「職場の雰囲気が良い」「自分の力でこの会社を成長させてみたい」「歴史がある会社」などです。この会社がなくなってほしくないと思う理由があれば、後継者になりたいと名乗りを上げる者が社員のなかから出てくるはずです。
誰も継ぎたがらないということは、会社そのものに魅力が足りないといわざるを得ません。
社長が高齢になるくらい存続してきた会社なら、数十年前は確かに魅力があったはずなのです。その魅力がなぜ失われてしまったのか、いつ失われたのかを遡って考えていくと、時代とともにビジネスモデルが古くなったとか、ライバルが増えて優位性が失われたとか、社長の成長意欲が低下したとか、消費者に飽きられたなどが分かってきます。
例えばいまだにファックスでやり取りしている会社があります。何十年も同じ商品だけ作り続けて新商品を開発していない会社や、外国の安価な製品に市場シェアを奪われている会社などは、若い社員たちにとっては魅力の薄い会社となります。
ICT時代(いわゆる第4次産業革命)になってから世の中の移り変わりは速くなっていますから、「今までこれで通用したから、これからもいけるだろう」という感覚でいると、すぐに置き去りになってしまいます。
現社長が「ストレスいっぱいで苦しそう」な様子だと…
7つめの要因として、社長が自分の背中を見せられていないことがあります。これは私自身の経験からもいえるのですが、社長自身が楽しそうに仕事をしているか、尊敬できる人間であるかを社長の子どもや社員たちはよく見ています。
社長が生き生きと働いていれば、周りの人間は「企業経営とはやりがいのある仕事のようだ」「人生をかける価値のあるものらしい」と感じるものです。逆に、ストレスいっぱいで苦しそうにしていれば「自分は社長にはなりたくない」と敬遠します。
また、社長が人間的に優れていると「自分も社長のようになりたい」と憧れの対象になります。私自身も社会人になって最初の上司が指導力があり人間的にも器の大きい人で、ずっと目標にしていました。その上司にかわいがってもらったおかげで、のちに私も自分の会社を立ち上げることになるのです。
社長業というのは金勘定や人間関係などシビアな側面も大きい仕事なので、四六時中楽しそうにしていることは不可能ですが、大変な日々のなかにも誇りややりがいをもっている、心のなかに情熱をもっているということが大事です。そういう内面の充実は自ずと外に溢れ、周りにいる人に伝わるものだからです。