富裕層の「資産運用」に対する意識の変化
新型コロナウイルス感染症の流行による金融緩和で資産が増加する恩恵を受けながらも、富裕層の多くは今後の投資環境の動向について非常に注意深く検討しています。
野村総合研究所が富裕層・超富裕層に該当する企業のオーナー経営者に行ったアンケート調査(2020年)では、投資に対する慎重な姿勢が表れています。
アンケートの回答を一部抜粋すると、回答者のうち50%の人が「複雑で分かりにくい商品よりも、シンプルで分かりやすい商品を好むようになった」と答えています。また、46%の人が「元本割れする可能性のある金融商品のリスクを、以前よりも気にするようになった」と答えました。
経済環境が大きく変化するなかで、大きな賭けを行うよりは堅実な投資を好む人が増えているのです。つまり多くの富裕層は経済環境の変化で資産増加の恩恵を受けながらも、金融商品の価値を決める金利や為替、景気、海外市場をはじめ、各企業の業績を左右する物価や物流等については非常に不安定であると判断していることが分かります。
「資産防衛」の手段を探す富裕層
今後の不透明な経済情勢のなかで生き抜くため、多くの富裕層・超富裕層は2010年代に得た資産を維持し堅実に増やすための「資産防衛」意識が高まっています。
富裕層が資産を防衛しようとした場合、生活費や遊興費を多少節約したところで大きな影響はありません。いわゆる「贅沢」ととらえられることの多い派手な飲食や遊興、ブランドものの洋服、高級車や高級時計、アクセサリー等の購入は富裕層の資産を減らす主たる原因にはならないのです。
あくまで私の体感ですが、これらの費用は一生涯に数億円程度に収まります(あまりにも限度を超える場合は別ですが)。
富裕層にとって投資の失敗による資産の減少や所得・相続にかかる税金と比べれば些細なものなのです。また先が読めないからといって、預貯金・タンス貯金を行うことも適切とはいえません。
富裕層ほどの資産をもつ場合、資産の大半を現金で保有しているとインフレが起こった場合に資産が大きく目減りします。物に対して貨幣の価値が下がると、預貯金・タンス貯金の価値が下がってしまうからです。万が一急な相続が発生すると多額の相続税が課されてしまい、一族の資産を大きく減らすリスクもあります。
経済情勢が不安定な時代に資産を守るためには、資産の一定以上をリスクが低く安定した資産に替えておくことが肝要なのです。
鈴木 子音
株式会社有栖川アセットコンサルティング
代表取締役
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