(画像はイメージです/PIXTA)

香港在住・国際金融ストラテジストの長谷川建一氏(Wells Global Asset Management Limited, CEO)が「香港・中国市場の今」を解説していきます。

7月の主要経済指標は、予想に反して軒並み減速

15日発表された中国の7月の主要経済指標は軒並み予想に反して減速した。

 

国家統計局が15日発表した7月の鉱工業生産は前年比3.8%増加。前月の3.9%、市場予想の4.3%ともに下振れた。7月の小売売上高も前年比2.7%増と、伸び率は前月の3.1%、市場予想の4.9%に届かなかった。

 

 

足元の中国の新規感染者増加に伴う都市規制が一部で継続して続いたほか、7月は住宅ローンの返済が滞り、不動産セクター危機にまで発展した。これらの影響が経済再開に伴う一時的な押し上げ効果が薄れ、予想に反して鈍化した結果となった。

 

新築不動産価格については15ヵ月連続で下落し前年比0.9%下落した。不動産投資についても1-7月は前年比6.4%減少と1-6月の5.4%減から減少ペースが加速し、2020年3月以降、最大の落ち込みとなった。資金繰りが悪化した不動産開発会社が7月に不動産投資を大幅に削減したことが影響した。
 

 

一方、中国人民銀行は既に支援を強化し、こうした逆風に対応している。15日、同銀は1年物中期貸出制度(MLF)の金利を予想外に引き下げた。MLF金利の引き下げは今年1月以来2回目となり、金利は2.85%から2.75%とした。

 

 

ただ、政策緩和についてはかつてないほどに反応が鈍く、一段の景気悪化を防ぐには十分ではない可能性が高い。いくら与信率を緩めても、企業も消費者も資金を増やすことに慎重になっている可能性が高く、景気刺激につながる可能性は低い。

 

来週22日は銀行の最優遇貸出金利であるローンプライムレート(LPR)の発表も控え、更なる緩和策が実施されるか注目が集まる。

 

今回の結果を受けて、一段と政策金利の金利引き下げの可能性が高まってきた。足元、1年物については今年1月以来、据え置きが続く一方、5年物については5月に15bpsの引き下げを実施した。5年物は住宅ローンの金利の指標となっており、それを見据えての引き下げだったが、不動産市場のリスクについては依然として低迷。

 

今回は銀行貸出の指標となる1年物と合わして経済成長、市場マインドの浮揚を狙う動きが想定されるが、緩和策が小刻みに留まると、実体経済にとっては限定的と言わざるを得ない。

 

ただ足元、発表された7月の中国消費者物価指数は2.7%と2020年7月以来2年ぶりの高水準となっている。積極的な金融緩和は更なる物価高を促す一方、大胆な金融緩和を行っても景気刺激策につながらない流動性の罠に陥る可能性もある。中国当局が悪化する経済について慎重スタンスは拭えず、今後の対策に注目が集まる。

 

 

長谷川 建一

Wells Global Asset Management Limited, CEO/国際金融ストラテジスト<在香港>

 

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