(※画像はイメージです/PIXTA)

筑波こどものこころクリニック院長/小児科医の鈴木直光氏は著書『新訂版 発達障がいに困っている人びと』のなかで、発達障がいとどのように向き合うべきかを記しています。発達障がいは治療ができない難病ではありません。本記事では、その治療について、実例をもとに解説していきます。

学校でも泣かなくなったようだが「心配ごとが一つ」

さらに母親が続けます。

 

「宿題の書き取りは、私が横についていて30分、つかないで15分できるようになりました。しかし、嫌いな算数は私がつかないとまだダメなようです。でもDRCのポイントが良くなってきました。それに私に叱られても泣かなくなったんですよ」

 

叱るだけでなく褒めることも忘れていないようで、お子さんとの接し方もスムーズになってきたと言います。

 

薬は忘れずに飲んでいるようです。カプセルが飲み込みづらいと最近訴えるようになったので、つぶしたり、ゼリーと一緒に飲んだりして飲めるように工夫をしていると言います。

 

継続が何よりも大切です。無理して飲ませると、お子さんは薬を飲むことをごまかすようになります。G君の母親のような工夫は、ぜひ取り入れてください。

 

「学校でも泣かなくなったようですが、ただ心配ごとが一つあります。実は本学級のクラスと相談教室(特別支援学級)のクラスでの様子に差があるみたいなのです」

 

「それでは、ADHD問診票を記入する際に『記入の手引き』を見てから記入してみてください」と母親に頼みました。

 

すると、担任から今まで認識していたものとズレがあったと、正直な意見が聞かれたのです。改めて母親と本学級と相談教室、それぞれ別々にやってもらうと、母親は不注意型も多動・衝動型も、9項目中3項目にチェックがあり、本学級の担任の方は、不注意型は9項目中9項目、多動・衝動型は9項目中5項目にチェックがありました。

 

一方、相談教室の担任は、不注意型が9項目中2項目、多動・衝動型においては、9項目中1項目しかチェックがなかったのです。この差を踏まえて診断をしていったところ、本学級は人数が多くて、周りがうるさいため、集中できていなかったことがわかったのです。

 

さらに服薬を続けると4ヵ月後には、カタカナを覚えられるようになり、宿題は母親がついているだけで手助けしなくても一人でやるようになったそうです。

 

「DRCのすべてのポイントがもらえて、担任に褒められました。夏休みの宿題も去年はひらがなが読めなかったのでやりませんでしたが、今年は私がひと言やりなさいと言っただけでできました」と母親は実に嬉しそうに話してくれました。

 

しかし、それから4〜5ヵ月経った頃でしょうか。薬の飲み忘れが目立つようになってきたそうです。わざと薬を飲まないかまたは捨てていたことが疑われます。それと同時に、最近多動が目立つと担任が母親に訴えてきたのです。

次ページ「薬の飲み忘れ」と「最近の様子」からわかること

本記事は幻冬舎ゴールドライフオンラインの連載の書籍『新訂版 発達障がいに困っている人びと』より一部を抜粋したものです。最新の税制・法令等には対応していない場合がございますので、あらかじめご了承ください。

新訂版 発達障がいに困っている人びと

新訂版 発達障がいに困っている人びと

鈴木 直光

幻冬舎メディアコンサルティング

発達障がいは治療できる 診断、対処法、正しい治療を受けるために 書版が出版されてから4年、時代の変化を踏まえて最新の研究データを盛り込み、大幅な加筆修正を加え待望の文庫化。 “「発達障がい」は治療ができない…

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