(※写真はイメージです/PIXTA)

土地評価額の目安とされる「路線価」は、タワーマンションの資産評価にも少なからず影響を及ぼします。それを逆手に取り、「相続税対策」と称して大幅な節税を試みる投資家も少なくありません。そんななか、路線価は2年ぶりに上昇へと転じ、また路線価を根拠とした相続税評価に法曹のメスが入るなど、2022年度はタワーマンションを活用した節税対策の大きな転換期となりそうです。収益不動産を活用した相続税対策において今後注意すべきことについて解説します。

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    路線価高騰で「タワマン節税」もピンチに!

     

    2022年度の路線価は、全国約32万地点の標準宅地(平均)は前年に比べ0.5%上昇しました。コロナ禍の影響も少しずつ薄れ、路線価も全国的に緩やかな回復軌道へと乗りはじめているようです。

     

    そこで心配になるのが相続税や固定資産税の上昇です。路線価が上がればそれだけ税額も高くなります。広い土地に建つ一戸建て住宅や一棟ビルだけでなく、土地持ち分割合が大きいファミリータイプマンションのオーナーにとっても増税は大打撃となりそうです。

     

    とはいえ、総戸数が多いタワマンは各戸の土地所有面積(土地共有持ち分)が小さいためそれほどの打撃はないものと思われます。それより心配なのは、路線価を根拠とした相続税評価に対する国税・法曹の怪しげな動きです。

    「相続税更正処分等取消請求事件」のあらまし

     

    上層階になればなるほど相続税の圧縮に有効とされてきたタワマン節税ですが、2年ぶりの路線価上昇に加え、路線価を根拠とした相続税評価にも法曹のメスが入るなど暗雲が立ち込めています。それは2022年4月、タワマン節税の主軸となる相続税評価方法が根底から覆らせる判決が下ったことからはじまります。

     

    タワマンA:6億3,000万円のローンを組み、8億3,700万円で購入

    タワマンB:3億7,800万円のローンを組み、5億5,000万円で購入

     

    被相続人は生前、想像組税対策のため上記2戸の収益不動産を購入しました。被相続人の死亡後、相続人たちは減価償却率に基づく建物評価額と路線価等に基づく土地評価額を根拠にタワマンAを約2億円、Bを約1.3億円と評価し、課税対象額約2,800万円から基礎控除を差し引き、相続税額を「0円」として申告しました。

     

    しかし、国税庁はこの申告について評価通達の定める方法によらず、他の合理的な方法によって評価するよう指示を下したのです。すなわち、路線価を根拠とした相続税評価ではなく、不動産鑑定士が評価する正常価格から改めて相続税額を算出するよう求めたのです。これにより課税対象額は約8.8億円となり、その相続税額は2億円超に膨れ上がる結果となりました。

     

    この判例は一般の不動産投資家のみならず、タワマン節税を推奨してきた投資系不動産業者にも衝撃を与えています。しかし総額13億円超の資産を3億円まで圧縮し、さらには相続税0円で申請するというのは甚だ大胆すぎます。これだけ派手なやり方をすればお役所も黙っているわけにはいかないでしょう。

     

    この判決によってタワマン節税が完全否定されたわけではありません。ただし節税はほどほどに、無税申告は控えた方が良いという教訓として今後に生かしたいと思います。

    まとめ

     

    路線価は全国各地の道路に付けられた価格です。路線価は地価公示価格の約8割程度の金額で決定され、毎年7月1日に発表されます。相続税の評価対象となる土地・建物評価額は路線価や建物の減価償却率で算出されるため、一般不動産市場の売買価格とは大きく乖離します。

     

    この価格乖離によってタワマン節税が有効に働くのです。2022年度は2年ぶりに路線価上昇に転じましたが、それによる相続税の増大よりも、路線価を根拠とする相続税評価を否定した法廷判決が下ったことが気がかりです。

     

    しかしこの判決によってタワマン節税が完全否定されたわけではありません。今後は極端な節税申告を控えることで国税の不意打ちを回避することも考えていかなくてはなりません。
     

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    ※本連載は、『ライフプランnavi』の記事を抜粋、一部改変したものです。

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