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外国人は「観光客」から「中長期在留者」へ
世界各国でコロナ禍への警戒レベルが緩和されはじめ、日本にも少しずつ外国人観光客が戻ってきています。コロナ禍がなければもっと早く、もっと多くの外国人が日本を訪れ、インバウンド需要は東京オリ・パラ開催中に最高潮を迎えていたはずなのに、残念としか言いようがありません。
外国人が日本を訪れる目的は観光だけに留まりません。出入国在留管理庁の調査(令和2年度「在留外国人に対する基礎調査」)によると、外国人が日本の在留資格を取る主な目的は以下の通りです。
●永住のため(24.1%)
●留学(17.1%)
●技術・人文知識・国際業務(16.2%)
●技能実習(10.8%)
大学留学や職業実習、出稼ぎなどを目的に入国する人たちもたくさんいることがわかります。そして、彼らが日本に住んでいる期間の合計(日本での通算在住年数)を見ると、
●3~10年未満(32.4%)
●1~3年未満(27.6%)
●10~20年未満(20.3%)
2、3年で日本を離れる外国人は3割未満で、5割以上が10年前後在留していることがわかりました。そしてこの在留者のほとんどが賃貸住宅で暮らすことになります。
コロナ禍直前の2019年、日本を訪れた外国人旅行者数は3,000万人に達しました。この中には、最初は観光目的で訪れたものの日本文化に心酔してしまい、「観光客」から「中長期在留者※」へと移行する人がいるかもしれません。今後そういった中長期在留外国人が増えていけば、外国人向けの賃貸需要も高まっていくのではないでしょうか。
企業のリモートワークや教育機関のオンライン授業の推進により、ワンルーム賃貸経営は空前のデフレスパイラルに陥っています。そんな状況だからこそ、不動産投資家はインバウンド、すなわち訪日外国人市場というニッチ分野に着目し、先行投資していく必要があります。
※ 総務省ホームページでは、日本国に在留資格をもって在留する外国人であって、3月以下の在留期間が決定された者や短期滞在・外交・公用の在留資格が決定された者等以外の者を「中長期在留者」としています。
外国人が多い街(エリア)はどこにある?
総務省の「国勢調査」を見ると、⽇本⼈の⼈⼝が減少の一途であることに対し、日本に住む外国⼈の⼈⼝は激増傾向にあることがわかります。それぞれの⼈⼝増減率を2015年と2020年とで比較してみると、⽇本⼈がマイナス1.4%なのに対し、外国⼈はプラス43.6%と爆発的に増加しており、日本の総⼈⼝に対する外国⼈割合も1.5%(2015年)から2.2%(2020年)へと急上昇しています。
日本に住む外国人を国籍別に見てみましょう。
1位:中国(約67万人)
2位:韓国・朝鮮(約38万⼈)
3位:ベトナム(約32万人)
この中でとくに増えているのはベトナム国籍で、2015年と2020年で比較すると約23万⼈の増加です。世代では20歳代の若い人が多く、在留の目的は技能実習や就労などです。
こういった外国人たちが居住地として選ぶのは、「母国出身の先輩在留者が多く住んでいるエリア」であり、かつ「母国の食材が手に入るスーパーや飲食店が多いエリア」です。東京都内ではインド系の人たちが多い「西葛西」や、韓国系の人たちが多い「新大久保」などが有名ですが、外国人が多い街は東京に限らず全国各地にあります。
◆大阪府大阪市⽣野区(区総人口に占める外国人人口の割合:21.8%)
⽣野区は古くから韓国系移住者が多いエリアです。移住の歴史は西暦660年の朝鮮半島・百済滅亡まで遡るともいわれます。そのため、区の中心地にある「御幸通り商店街」には韓国・朝鮮の食品等を扱う店舗が林立しており、この周辺は「生野コリアタウン」と呼ばれています。
◆⻑野県南佐久郡川上村(村総人口に占める外国人人口の割合:19.0%)
川上村は「日本一のレタス産地」として知られていますが、若年人口減少による農家の労働力不足が悩みの種でした。そのため外国人技能実習⽣の受け入れをはじめたところ、ベトナムやフィリピンなどから20歳代の若者が大勢来日し、地元産業の救世主となっています。
◆群⾺県邑楽郡⼤泉町(町総人口に占める外国人人口の割合:18.4%)
⼤泉町では、⾃動⾞・食品など複数の製造工場が戦後の高度成長期から稼働を続けています。1980年代のバブル期には深刻な労働力不足に見舞われましたが、その窮地を救ったのがブラジル人を中心とした外国人労働者です。彼らの生活を支えるのは町中心部にある西小泉駅(東武小泉線)周辺の「ブラジリアンタウン」で、ブラジル食材の豊富なスーパーや飲食店が建ち並んでいることで知られます。