(写真はイメージです/PIXTA)

「利用規約に同意したものとみなします」という文言を見たことはありませんか? このような言い回しが曖昧な利用規約は、ユーザーとのトラブルを招く原因になると、企業法務に詳しいAuthense法律事務所の西尾公伸弁護士はいいます。本記事では、トラブル化を防ぐ利用規約を作成するための規約への同意条件や規約変更時の注意点などを裁判化してしまった事例などをもとに解説します。

利用規約を変更・改定するときのポイント

利用規約を変更したり改定したりする際には、次の点に注意しましょう。

 

不当条項ではないか確認する

新たな利用規約のなかに、不当や不意打ち的な条項が含まれていないかよく確認しましょう。 先ほど解説したように、ユーザーにとって不利益となる条項や不意打ち的な条項は、契約への組み入れが否定されます。

 

既存ユーザーの個別同意が必要であることを知っておく

利用規約の変更には、民法の一般原則に従えば既存ユーザーの個別での同意が必要となります。もっとも、不特定多数のユーザーに対し、継続的にサービスを提供する以上、利用規約の内容を変更する必要性が生じる場合があるかと思います。

 

その際には、以下の要件のいずれかに該当する場合には、ユーザーの個別的な同意を必要とすることなく、利用規約(定型約款)を変更することができます。

 

・定型約款の変更が、相手方の一般の利益に適合するとき

・定型約款の変更が、変更に係る事情などに照らして合理的なものであるとき

 

各法令を遵守する

利用規約を変更する際には、新たに策定する場合と同様に、各法令を遵守する内容で作成しましょう。

 

変更内容が明らかに違法ではなくとも、ユーザーにとって不利益な内容が付加された場合には、既存ユーザーの反発を招き、内容によってはSNSなどで炎上してしまい、ひいてはサービスの価値が低下するリスクが高くなることから注意が必要です。

利用規約変更の手順

現在使用している利用規約を変更する場合は、次のような手順を取りましょう。

 

ステップ1:変更後の利用規約のたたき台を作成する

はじめに、変更後に使用する予定の新たな利用規約のたたき台を作成します。利用規約の変更とあわせてウェブページの改訂も検討している場合には、ユーザーへの表示方法についても検討しておきましょう。

 

ステップ2:弁護士にチェックしてもらう

利用規約の作成には民法や消費者契約法などさまざまな法的知識が不可欠であり、自社のみで作り上げることは容易ではありません。

 

また、他社の利用規約の「コピペ」では、自社の提供するサービスに適合せずトラブルが生じた際に対応できないことが想定されますし、他社独自の部分までそのままコピーしてしまうと著作権侵害が生じるおそれもあり、トラブルが起きた際に問題となる可能性が高いでしょう。

 

そのため、利用規約のたたき台を作成したら、弁護士にチェックしてもらうことをおすすめします。併せて、ユーザーへの表示方法についても問題がないかどうか確認してもらうとよいでしょう。

 

ステップ3:ユーザーに変更内容を周知する

変更後の利用規約が完成したら、ユーザーに変更後の利用規約の内容と、変更後の利用規約がいつから適用されるのか周知します。

 

周知の方法としては、サービスを提供しているウェブサイト上で行う方法や、登録会員宛てに電子メールを送信する方法で周知することが一般的です。

 

ステップ4:HPに掲載する

周知期間が経過したら、新たな利用規約として運用を始めましょう。

利用規約はトラブル時の拠りどころ

利用規約は、いざトラブルが発生した際の拠りどころとなるものであり、不特定多数のユーザーに向けてサービスを提供する事業者にとって不可欠なものです。

 

利用規約を作成しないままサービスを提供することはもってのほかですが、他社の利用規約をコピペしたまま、なんら手を加えず、不安を抱えたまま事業を進めることはおすすめできません。利用規約を作成する際には、弁護士へ相談するようにしましょう。

 

 

西尾 公伸

Authense法律事務所

弁護士
 

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本記事はAuthense企業法務のブログ・コラムを転載したものです。

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