なぜ世界保健機関の報告書は中国寄りなのか
■中国の影響を受けた世界保健機関(WHO)の報告書
新型コロナの起源についてはWHOの見解が重要になる。WHOは2021年3月30日、新型コロナの起源に関する報告書を公表したが、報告書の内容は中国共産党の影響をうかがわせる不完全なものであった。同報告書は、ウイルスの起源に関する4つの仮説について分析している。
①最も可能性が高い仮説
コウモリから他の中間宿主を経てヒトに感染した。
②次に可能性が高い仮説
コウモリから直接ヒトに感染した。
③可能性のある仮説
輸入冷凍食品を介してウイルスが中国にもちこまれた(WHOはこの仮説について、「可能性がある」ため追加調査をする価値があると判断した)。
④きわめて可能性が低い仮説
WIVのような研究施設の事故(incident)によりウイルスが流出した。
つまり、同報告書は、「WIVのような研究施設からウイルスが流出した可能性はきわめて低い」と結論付けるとともに、WIVの施設について「適切に管理されていた」「世界水準でみても、バイオ安全性の高い研究施設で、当局や内部による定期的な見直しと新たな知見の検証がおこなわれていた」と肯定的に評価している。
しかし、ジェイク・サリバン米大統領補佐官(国家安全保障担当)はこの報告書を批判した。
WHOのテドロス・アダノム事務局長でさえ同報告書の信憑性のなさを認識している。
彼は「今回の評価が十分広範囲なものだったとは考えていない。より堅固な結論に達するためには、さらなるデータと研究が必要になろう」「調査チームは、WIVからのウイルス流出説はもっとも可能性の低い仮説だと結論付けたが、これはさらなる調査が必要だ」と語っている。
テドロス氏はさらに専門家を派遣する用意があるとしているが、中国政府はそれを拒否している。また、中国政府は、公式の見解に疑問を呈した科学者やジャーナリストを2020年に沈黙させたが、新型コロナ発生源に関する情報にWHOの調査チーム等が独自にアクセスすることを制限している。