情報機関の「バイデン報告書」の中身
■米国の情報機関の調査結果
ジョー・バイデン米大統領は、米情報機関に対して、新型コロナの起源に関する「情報の収集・分析」をおこない、2021年8月末までに報告することを求めていた。
それを受けて、情報機関は報告書「COVID―19に関する最新の評価」を提出したので、その結論部分を紹介する。ここでいう情報機関とは、米国に16ある情報機関を統括する国家情報長官(DNI:Director of National Intelligence)と大統領直属の諮問機関である国家情報会議(NIC:National Intelligence Council)のことだ。
米情報機関は「新型コロナを引き起こすウイルス(SARS-CoV-2)が、2019年12月に武漢で発生した新型コロナ症例の最初の既知のクラスターの原因である。このウイルスは、2019年11月までに発生した最初のクラスターが感染した動物などからウイルスを取りこむことによって、ヒトに感染した可能性がある」と評価している。
さらに、情報機関は「そのほかの重要な問題について、幅広い合意に達することができた。具体的には以下のようなことである」としている。
①「ウイルスは生物兵器として開発されたものではない」と判断した。
②情報機関のほとんどは、SARS-CoV-2がおそらく遺伝子操作されていないと(低い確信で)評価した。しかし、残りのふたつの機関は、評価をおこなうのに十分な証拠がなかったとしている。
③情報機関は、新型コロナが最初に発生する前に、中国の当局者がウイルスについての予見をもっていなかったと評価した。
しかし、新型コロナのもっとも可能性の高い起源についての見解は、情報機関によって分かれている。ただ、すべての機関は「感染した動物への自然曝露と実験室関連の事件というふたつの仮説がもっともらしい」とは評価している。
・四つの情報機関と国家情報会議は、最初のSARS-CoV-2感染は、感染した動物または近縁の前駆ウイルス(おそらく99%を超える確率でSARS-CoV-2と似たウイルス)への自然曝露によって引き起こされた可能性がもっとも高いと(低い確信で)評価した。
・ひとつの情報機関は、SARS-CoV-2による最初のヒト感染は、おそらく実験、動物の取り扱い、武漢ウイルス研究所によるサンプリングにともなう実験室関連の事故の結果である可能性が高いと(中程度の確信で)評価している。この評価を下したアナリストは、コロナウイルスに関する作業の本質的な危険性に重きを置いている。
・三つの情報機関のアナリストは、追加情報がないと「自然起源説」と「実験室起源説」、どちらの説が正しいか結論付けることができないとした。一部のアナリストは自然起源説を支持し、他のアナリストは実験室起源説を支持し、一部のアナリストは両者を同等と評価している。
・情報機関(および世界の科学コミュニティ)は、初期の新型コロナ症例の臨床サンプルまたは疫学データの完全な理解を欠いている。関心のある場所または職業上の曝露を特定したもっとも初期の症例に関する情報を入手したならば、仮説の評価が変わる可能性がある。 新型コロナの起源の決定的な評価に到達するには、中国の協力が必要になる。
しかし、中国政府は引き続き世界的な調査を妨害し、情報の共有に抵抗し、米国を含む他国を非難している。これらの行動は、調査が中国の不利益になることをどこまで暴き出すのかについて、中国政府自身がわかっていないことと、国際社会が中国に政治的圧力をかけるために、パンデミックの発生起源がわからないという問題を利用しているという、中国政府のフラストレーションを反映している。