「有事の金」は意外とリスキー?資産防衛・長期的な資産形成に適した“投資先”を考える【税理士が解説】

「有事の金」は意外とリスキー?資産防衛・長期的な資産形成に適した“投資先”を考える【税理士が解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

円安、インフレ、増税…これらが同時進行する“最悪のシナリオ下”でも資産を守れる「投資先」は、いったいどこなのでしょうか。数ある投資先の中でも、板山翔税理士は「株」、特にアメリカ株が最適と考えます。とはいえ、資産防衛に使える投資先はアメリカ株だけではありません。今回は「債権、投資信託、不動産、金(ゴールド)、FX、仮想通貨(暗号資産)」に焦点を当て、アメリカ株との比較を交えつつ、それぞれの特徴やメリット、どのような人に向いているのかなどを解説します。

金(ゴールド)

■リスクヘッジ手段の1つにはなるが、メインの投資先には向かない

金は実物資産だから安心、といったイメージとは裏腹に、経済状況や世界情勢によって大きく値動きするため、価値が0になることはありませんが、決してリスクが低いとは言えません。

 

また、配当や利息などの、保有しているだけで得られるインカムゲインはないため、リターンは売却することによって得られるキャピタルゲインに限られます。

 

それゆえに、景気が良いときや金利が上がったときは、金を売って株や債券を購入してインカムゲインを得ようとする動きが高まるため、金の価格は下落する傾向があります。

 

逆に景気が悪化したときや、紛争やテロなどで社会情勢への不安が高まったときは、リスクの高い株や債券が売られて価値がなくならない金を購入する動きが増え、金の価格は上昇しやすくなります。

 

株と同じく毎月一定金額を購入するドルコスト平均法(純金積立)によって価格変動リスクは軽減できますが、世界経済が成長して景気が良くなっていった場合、最終的に金の価格が下がってしまうおそれがあります。

 

数日内に現金化できることが多いので流動性は悪くありませんが、金を自宅で保管する場合は管理に気を付けなければならないのと、純金積立の場合は年会費や購入手数料などの管理コストがかかってしまうことにも要注意です。

 

金を売ったときは譲渡所得となりますが、株や不動産と違って総合課税の譲渡所得ですので、給与所得などと合算されて税率が計算されてしまいます。ただし50万円の特別控除があり、所有期間が5年を超える長期譲渡所得の場合は1/2しか課税されませんので、長期保有のほうが税負担は少なくてすみます。

 

景気と逆の動きをしやすい性質を利用して、リスクヘッジの手段の1つとして購入する手はあるかもしれませんが、配当や利息などのインカムゲインがないため株や債券と比べると長期保有しづらく、主な投資先としては使いづらい印象です。

FX(外国為替証拠金取引)

■少額から投資可能だが、長期保有や資産防衛という観点では不向き

FX(外国為替証拠金取引)とは、簡単に言えば外国通貨の売買をして利益を得ようとする取引です。外国通貨を買ってから売るだけではなく、売ってから買うこともでき、売買の差額だけが決済される差金決済が行われます。

 

したがって、為替の動きさえ読めれば円安になった場合でも円高になった場合でも利益を出すことができます。

 

また、証拠金(保証金)を担保にして、国内FXの場合その証拠金の25倍までの取引ができるため、たとえば100万円しかなくても2,500万円の取引ができるのが大きな特徴です。

 

したがってハイリスクハイリターンではありますが、逆に少額でも始められるメリットもあり、証拠金が維持できないときは強制的に取引が終了されるロスカットという仕組みもあるため、証拠金がマイナスになって借金を背負うようなことまでは通常起こりません(※ただし、急激な為替変動があったり、システムトラブルがあったりしてロスカットが間に合わないケースもあるそうです)。

 

差金決済のたびにかかる手数料(スプレッド)は安いですが、為替の動きを予測するための知識の習得、経済や金融政策の動向の分析、資金管理などに相当の時間を要するため、管理コストが安いとは言えません。

 

税制面では「先物取引に係る雑所得等」という分類になり、雑所得にしては例外的に20.315%(所得税等15.315%、住民税5%)の申告分離課税となり、損失も毎年確定申告をすれば3年先まで繰り越せるよう配慮されています。

 

とはいえ短期売買で利益を出すのは難易度が高く、かなりの手間や労力も要しますので、不動産と同じく真剣に取り組める人にしかおすすめできません。

 

円安傾向が続くとすれば、今のうちにドルを買って寝かせておいて、円安になってから売却すればよいのでは?と考えた勘の良い人もいるかもしれませんが、円高に振れた瞬間損失が大きくなってロスカットなんてことも…。

 

長期保有や資産防衛という観点からは、なかなかおすすめできません。

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