【確定申告】カフェで作業したときの「コーヒー代」、仕事着の「スーツ代」…どこまで計上できる?〈きわどい経費〉の判定基準【税理士がまとめて解説】

【確定申告】カフェで作業したときの「コーヒー代」、仕事着の「スーツ代」…どこまで計上できる?〈きわどい経費〉の判定基準【税理士がまとめて解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

カフェで仕事をした際のカフェ代や、スーツ・ビジネスバッグ・メガネなどの被服費、飲食代やゴルフ代などの交際費…。個人事業主はどこまで経費にできるのでしょうか? 個人事業主にとって、これらは判断が難しいという意味で「きわどい経費」と言えます。板山翔税理士が、経費にできるか否かを見分けるための基本的な考え方や、筆者の見解を紹介します。

 

――カフェ代やスーツ代、飲食代などの交際費って、どこまで経費にしていいのでしょうか?

 

板山翔税理士:「個人事業主は仕事とプライベートの区別が難しいので、判断に迷いますよね。今日はこういったきわどい経費を集めて、どこまで経費にできるのか、まとめて解説していきます。」

よく質問される「きわどい経費」をまとめて解説

 

1人でカフェで仕事をしたときのカフェ代、スーツやビジネスバッグ、メガネなどの被服費、飲食代やゴルフ代などの交際費etc、経費にしていいものかどうか悩ましい支払いってたくさんありますよね。

 

その他にも新聞雑誌の購読料、神社で祈祷を受けた祈祷料、美容室代や化粧品代、ロータリークラブの会費など、きわどい経費を挙げ出したらキリがありません。

 

個人事業主は仕事とプライベートの区別が難しく、また、どこまで経費にしていいのか、詳しく書いてくれている法律や公式のパンフレットのようなものもないので、悩ましいのも当然です。

 

私たち税理士でも、100%経費にできるとは断言できないグレーな部分はいくらでもありますし、ネットで調べても曖昧な答えしか載ってないことも多いです。

 

そこで本稿では、こういった特に質問が多いきわどい経費を集めて、それぞれ経費にできるのか否か、税理士である私の見解を具体的に解説していきます。

 

私の言う通りにすれば100%経費にできるというものではありませんが、信頼性の高い専門家の意見として、ぜひ参考にしてください。

そもそも「法律上、経費として認められるもの」とは?

きわどい経費一つ一つについて具体的に解説する前に、まず法律上はどこまで経費として認められているのか? 基本的な考え方を簡単に説明しておきます。

 

■必要経費の定義

所得税法第37条に定められている、必要経費の定義を要約すると次のとおりです。

 

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【必要経費の定義(所得税法第37条)】

「事業所得(又は不動産所得、雑所得)の金額の計算上必要経費に算入すべき金額は、

1.売上原価その他総収入金額を得るため直接に要した費用の額

2.販売費、一般管理費その他業務について生じた費用の額

とする。」

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このようにざっくりと規定されているだけで、これだけを見ても、どこまで販売費や一般管理費として認めてもらえるのか? 自分が必要経費だと思えば経費として認めてもらえるのか?といった線引きはわかりません。

 

■必要経費に関する過去の判例

そこで当然、どこまで経費にできるのか、過去に何度も裁判で争われてきました。

 

そして過去の判例を見てみると、必要経費であるかどうかは自分が主観的に決めていいものではなくて、第三者が客観的に見ても必要経費であると認められるものでなければならないという判断がされています。

 

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【必要経費に関する過去の判例】

1.「事業遂行のために必要か否かの判断は,単に事業主の主観的判断のみではなく,通常かつ必要なものとして客観的に必要経費として認識できるものでなければならない」(昭53.4.24東京地裁)

 

2.「必要経費として総所得金額から控除されうるためには,客観的にみてそれが当該事業の業務と直接関係をもち,かつ業務遂行上通常必要な支出であることを要し,その判断は当該事業の業務内容など個別具体的な諸事情に即し社会通念に従って実質的に行われるべきである」(昭61.10.31仙台高裁)

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したがって、自分が事業に必要な支払いだと思っているだけではなくて、商慣習や一般常識などにも照らし合わせて、誰が見ても事業に必要だと思ってもらえるようなものではないと、必要経費として認めてもらえないということです。

 

■家事関連費の場合

また、仕事とプライベートの両方で使うような経費(家事関連費)は必要経費として認めてもらえるのか?というと、所得税法上、「原則は経費にできないが、仕事に必要な部分を明らかに区分することができる場合のみ経費にできる」といった取り扱いになっています。

 

そのため、今日解説する飲食代などのきわどい経費については、「80%は仕事の話をして、20%はプライベートの話をした」なんて合理的に区分しようがないので、プライベートも混在しているようなものであれば経費計上は難しいです。

 

スマホ代や車両費などの家事関連費の合理的な経費計上割合の決め方について詳しく知りたい方は、関連記事『個人事業主の「スマホ代」や「自宅兼事務所の家賃」…いくらまで「経費」になる?税務署に認められる〈合理的な経費計上割合〉【税理士が解説】』を参照してください。

 

■必要経費として認められるための「2つの条件」

以上のことから、法律的に必要経費として認めてもらえるための条件を2つにまとめると、次のとおりとなります。

 

【必要経費の2つの条件】

1. 事業主の主観だけではなく、客観的に見ても事業に必要な支出であること

2. 家事関連費である場合は、事業に必要な部分を合理的に区分できること

「きわどい経費」はどこまで経費にできるのか?

必要経費の条件が明らかになったところで、いよいよこれをもとに、きわどい経費一つ一つについて、どこまで経費にできるのか、具体的に解説していきます。

 

<カフェ代などの雑費>

①カフェ代

⇒1人でカフェで仕事をしたときのカフェ代については、雑費や会議費などとして経費計上できます(カフェ代に限らず、勘定科目は何費にしてもらっても構いません。必要経費に変わりはないので)。

 

ただし、食事や休憩でカフェを利用しただけの場合は、経費計上はできません(複数人でカフェに行った場合については、後述する「飲食代」の部分を参照してください)。

 

一昔前なら、カフェで1人で仕事をしていたとしても、ほんとにカフェで仕事なんてしてるの? カフェで仕事する必要ある?なんて思われることも多く、経費にしづらい面はたしかにありました。

 

しかし、今はノートパソコン一つで仕事ができる時代で、カフェにもWi-Fiやコンセントが設置されていることが多く、カフェでZoom会議に参加している人もよく見かけます。自宅だと家族がいて作業に集中できないので、わざわざカフェに行く人も多いです。

 

よって、仕事をするためにカフェでコーヒーやパンなどの軽食を注文することは、客観的に見ても事業に必要な支出だと言えるでしょう。

 

とはいえ、カフェで昼食や夕食をとった場合には、例えそのあと仕事をしていたとしても、経費計上はしない方が無難です。

 

というのも、少なくとも1人で食事している間は仕事はしていないですし、支払の目的も客観的に見れば仕事のためというより食事のためでもあるので、家事関連費として仕事に必要な部分を区分できないからです。

 

②新聞代や雑誌代

⇒自分の事業と関連性が深い専門紙や業界紙の購読料については、雑費や新聞図書費として経費計上できます。

 

しかし、一般家庭でも読まれるような一般紙の購読料については、普通は経費計上できません。仕事のためにわざわざ新聞取って読んでるのに…と思う人も多いと思いますが、これは一般教養を磨くためでもあるため、仕事に必要な部分を区分できないからです。

 

もちろん美容院のように、お客さんに読んでもらうために一般紙を買っている場合や、ライターが記事を書く情報収集のために一般紙を購入している場合などは、仕事に直結しているため経費計上が可能です。

 

③祈祷料

⇒商売繫盛などのために神社で祈祷してもらったとしても、その祈祷料は経費計上できません。これが事業に必要かどうかは個人の宗教観によるため、客観的に事業に必要と認められるようなものではないからです。過去の判例でも「宗教的な行為であって、業務との関連性、必要性を欠く」として否認されています。

 

④美容室代や化粧品代

⇒美容室代や化粧品代は、基本的には経費計上できません。事業をする上で身なりを整えることはもちろん大切なのですが、仕事部分とプライベート部分を区別できないからです。

 

ただし、日常のカットではなく特別な仕事の前にヘアセットに行った場合や、モデルや俳優などが撮影でしか使わない特別な化粧品を購入した場合など、ほぼ100%仕事のためと言える支出であれば経費計上は可能です。

 

<スーツ代などの被服費>

①スーツ代

⇒仕事でしか使わないスーツ代については、被服費や消耗品費などとして経費計上が可能です。ネットで調べるとスーツはプライベートでも使うため、経費にできないという意見が多いのですが、私はこれに昔から疑問を感じています。仕事以外でスーツを着る場面ってそんなにありますかね?

 

私は冠婚葬祭は略礼服(ブラックスーツ)で行きますし、ドレスコードがある飲食店はジャケットパンツスタイルで行くため、スーツは仕事でしか使わないものがほとんどです。

 

客観的に見ても仕事用のペンやパソコンより、よほどスーツの方がプライベートで使わないと思うのですが、なぜかスーツはダメと言う意見が多いです。

 

たしかに世間が経費にできないと思っているのであれば、それはそれで一般常識として考慮しないといけない面もあるのですけど、私は経費にできると判断しています。

 

もちろん、たまにプライベートでも着ることがあるようなライトなスーツについては、仕事に必要な部分を区分できないので、経費計上していません。

 

また注意点としては、個人事業主であるとはいえ、給与所得もあるサラリーマンや会社役員であれば、スーツ代は経費にできません。

 

というのも給与所得者の場合は、サラリーマンでもスーツやビジネス用品などの経費がかかることを考慮して、給与所得控除という控除をすでに受けられていますので、事業所得の経費としても計上してしまうと、二重で控除を受けているような状態になってしまうからです。

 

②ビジネスバッグ・ビジネスシューズの購入代金

⇒スーツ代と同じく、仕事でしか使わないビジネスバッグやビジネスシューズの購入代金については、被服費や消耗品費などとして経費計上が可能です。

 

こちらもプライベートでも使うことがあるバッグやシューズであれば、経費計上は避けましょう。給与所得がある場合もスーツ代と同様に、経費計上はできません。

 

③メガネ・コンタクトの購入代金

⇒メガネやコンタクトについては、基本的に経費計上はできません。仕事のときしか着けないような特殊なものがあれば別ですが、基本的には仕事が終わったらすぐに外すようなものではなく、仕事に必要な部分を区分できないからです。

 

<飲食代などの交際費>

①飲食代

⇒仕事の打ち合わせや接待などで、カフェや飲食店で食事をした場合の飲食代は、会議費や接待交際費として経費計上できます。

 

ただし、冒頭で説明したとおり、プライベートと混同してしまうと経費にはできないので、飲食の目的やメンバー、食事に行く頻度などから、事業に必要であると言えるものでなければなりません。

 

例えば同じようなメンバーで頻繫に食事に行っていると、本当に仕事の話をしているのか? 友達同士でご飯に行っているだけでは?と疑問を持たれてしまいます。

 

仕事上の付き合いとプライベートな付き合いをきれいに分けることは不可能ですが、少なくとも自分にとっては事業に必要であると思えるものを経費計上しましょう。

 

②ゴルフ代

⇒顧客や取引先と行ったゴルフのプレー代金については、接待交際費として経費計上できます。ただし、飲食代同様、ゴルフに行く目的やメンバー、頻度などから、接待ではなく趣味でゴルフを楽しんでいるだけだと思われてしまうと、経費として認められない可能性があります。

 

また、ゴルフクラブやゴルフウェアの購入代金、打ちっぱなしの費用などは経費にはしない方が無難です。これらのゴルフ用品はスーツやビジネスバッグなどのビジネス用品と違って、もともと仕事用というよりプライベートで使うものですし、1人で打ちっぱなしに行くことが事業のためだけであるとも言い難いため、家事関連費と見られる可能性が高いからです。

 

③ロータリークラブなどの会費

⇒ロータリークラブの入会金や会費は、経費計上はできません。法人であれば交際費にできるのですが、個人事業主の場合は必要経費にできないものとした判例がいくつもあるからです。

 

ビジネスを拡大するためにこういった会に入って人脈を広げ、実際に売上につながっている人も多いと思うので、経費にしたい気持ちはすごくよくわかります。

 

しかし、ロータリークラブで行う活動の目的は社会奉仕や地域貢献などであり、客観的に事業に直接関係があるとは言えず、私的な活動との区分もできないため、必要経費とは認めてもらえていません。また、同じく奉仕団体であるライオンズクラブの会費も経費計上はできません。

 

加えて、同窓会の会費も経費として認められなかった判例があります。本人は仕事の営業のつもりで同窓会に参加していたとしても、同窓会の目的はプライベートな友達同士の付き合いなので、客観的に事業に必要とは言えないだからです。

 

一方で、BNIのようなビジネスの拡大を目的とする異業種交流会の会費については、経費計上が可能です。

判断基準は「必要経費の2つの条件」を満たせるかどうか

本稿ではよく質問されるきわどい経費を集めて、必要経費の2つの条件をもとに、それぞれ経費にできるのか否か判定していきました。

 

やっていることはどれも同じで、必要経費の2つの条件を満たせるものは経費にできて、満たせないものは経費にできません。

 

今日紹介できなかったきわどい経費もたくさんありますが、基本的には同じように判定すればいいだけですので、必要経費の2つの条件を忘れないようにしてください。

 

詳しく説明したので少し長くなりましたが、最後まで読んでくださってありがとうございました。

 

(P.S.)

どこまで経費にできるのかは法律で細かく決まっていなくて、まだ判例が出ていないものもあるので、誰も答えは持っていませんし、私と違う意見があっても何ら不思議はありません。しかし、基本的な考え方は変わらないので、今日解説した内容をもとに、自信をもって経費にできる、できないを判断してください。

 

 

板山 翔

板山翔税理士事務所 代表、税理士

 

平成28年に日本初のオンライン専門の税理士事務所を開業。塾講師歴7年、大手WEBメディアで連載を持つなどの異色の経歴を持つ。5人以下の小さな会社の経営者へ向けて、様々なメディアで情報を発信しており、YouTubeチャンネル「税理士ショウの超わかりやすいビジネスQ&A」は動画9本で登録者1,000人を超えるなど急成長している。

 

 

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