老朽化したアパートを所有していたオーナーが建物がつぶれて入居者が亡くなった結果、その管理責任を問われて1億円以上の損害賠償を命じられたケースもあります。さらに火災リスクに備えるためには、建物の構造だけではなく、立地も重要です。24,000戸以上を管理する不動産会社の代表の重吉勉氏が著書『不動産投資が気になったらはじめに読む本』(金風舎)で解説します。

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安易に築古アパートに手を出すと危険な理由

■老朽アパートに投資して1億円の損害賠償責任を受けたケースも

 

阪神淡路大震災のときに、老朽化したアパートを所有していたオーナーが必要な処置をとらずに、建物がつぶれて入居者が亡くなった結果、その管理責任を問われて1億円以上の損害賠償を命じられたケースもあります。

 

利回りが良いからといって安易に築古アパートに手を出すと、考えている以上に大変な事態を引き起こしてしまうので注意が必要です。

 

■鉄筋コンクリート造の物件を選ぶ

 

鉄筋コンクリート造のマンションなら、万が一火災が発生して全焼してしまっても2か月程度で元どおりになります。木造アパートの場合は1部屋の火災がアパートすべてに燃え移ってしまいますが、鉄筋コンクリート造のマンションの場合は、1部屋だけに被害はとどまります。全焼するほどの火災でも、2か月もすれば新築同然にリニューアルをした部屋に生まれ変わらせることができます。

 

実際にわたしの会社でも過去に何度もワンルームの全焼事故を経験しています。全焼といっても火災はその1部屋だけにとどまり、隣室や上下階に燃え広がることはありませんでした。

 

全焼してしまった部屋は、コンクリート剥き出しのスケルトンの状態まで戻し、フルリフォーム工事を行ない、2か月程度で工事を完了することができました。

 

もともとバスとトイレが一緒だった部屋を、バスとトイレを別々に分け、居室にはあとづけした洗濯機置き場がありましたが、廊下にあるキッチンスペースと入れ替えました。さらに天吊りタイプのクローゼットに変更して、より広い空間と収納のスペースを確保するなど、フルリノベーションを行いました。

 

なお、こうした工事の費用は、オーナーが加入する火災保険の保険金からまかなうことができます。

 

8つのリスク重吉勉著『不動産投資が気になったらはじめに読む本』(金風舎)より。
8つのリスク重吉勉著『不動産投資が気になったらはじめに読む本』(金風舎)より。

 

■もし木造アパートだったら……

 

もし、これが木造アパートで起きた火災事故であれば、どうなっていたでしょうか。火災は1室に留まることはなく、アパート1棟をまるごと全焼させてしまうほどの火災事故となったかもしれません。燃えてしまったアパートを解体して、最初からアパートを建てるとすれば、少なくとも半年はかかります。

 

その間家賃収入が途絶えても、ローンの返済は待ってはくれません。それほどの被害となれば、火災保険の保障の範囲内では建て直すことはできないはずです。火災が起きて建て直すことができず、しかも、多額のローンだけが残ってしまう。そんな事態も起きかねません。

 

一方で、鉄筋コンクリート造のマンションの場合は復旧費用も保険ですべてカバーでき、しかも部屋をグレードアップできることすらあります。

 

火災リスクに備えるためには、被害を最小限にとどめて、すぐに賃貸できる状態に戻せる鉄筋コンクリート造のマンションがおすすめです。

 

■路地、木造建物の密集地は避ける

 

さらに火災リスクに備えるためには、建物の構造だけではなく、立地も重要です。

 

火災リスクを抑える立地選びのポイントは2つです。

 

・火災事故が起こった際に緊急車両が入れる道路幅があること
・延焼が広がりやすい木造密集エリアは避けること

 

各自治体ではエリアごとの火災危険度ランクマップを作成し、ウェブなどで紹介しています。マップを参考にして、火災危険度の高いエリアは避けましょう。
 

 

重吉 勉
株式会社日本財託 代表取締役社長

 

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本連載は重吉勉氏の著書『不動産投資が気になったらはじめに読む本』(金風舎)から一部を抜粋し、再編集したものです。なお、データは出版時点の情報に基づいています。

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