「6~7時間の睡眠」が心疾患リスクを下げる
2021年5月に米国心臓病学会学術集会で発表された研究結果によると、心筋梗塞や脳卒中で死亡する可能性が最も低いのは、一晩の平均睡眠時間が6〜7時間の人だったそうです。
これは2005〜2010年に行われた米国国民健康栄養調査の参加者1万4079人のデータを用いたもので、一晩の睡眠時間を6時間未満、6〜7時間、7時間以上の3群に分類しました。すると、動脈硬化性心血管疾患を起こすリスクと睡眠時間の間にはU字型を描く関係性があり、睡眠時間が6〜7時間の群のリスクが最も低いことが明らかになったのです。
これ以外にも、睡眠時間と心疾患の関係性を調べた研究はたくさんありますが、ほとんどの結果が似たような結果を導き出しています。つまり、短時間でも長時間でもなく、おおむね6〜7時間の睡眠時間が心疾患のリスクを下げる、というのです。
なぜ、短時間睡眠や長時間睡眠が心疾患のリスクを上げるかというと、それぞれ理由が異なります。
まず短時間睡眠が心疾患のリスクを上げる理由については睡眠時間が短いことで交感神経が活性化すること、それに関連して血圧や心拍数が上昇すること、また、睡眠不足はインスリンの抵抗性を高め糖や脂質の代謝異常につながることなどが挙げられます。
そのほか、睡眠時間が短いと満腹ホルモンのレプチンが減り空腹ホルモンのグレリンが増えること、また、睡眠が十分でないことによって倦怠感が強まり身体活動が減少することも、肥満を招き心疾患のリスク増加につながると考えられています。
一方、睡眠時間が長いとなぜ心疾患のリスクが高まるかについてはいろいろな説がありますが、睡眠時間の長さが問題というよりも、すでに他の疾患を抱えているがゆえに睡眠時間が長くなり、その結果心疾患を発症しやすいのではないかと考えられています。