(3)証拠を出すタイミング
次に、相談の(4)のように、もし先に慰謝料請求した場合、不貞行為が確定され、それをもとに向こうの家族から慰謝料請求される可能性があるのかという点についてですが、請求したこと自体をもって、不貞行為が確定することはありません。
もっとも、相談者が慰謝料請求した際の証拠が、相手方に渡った場合、相手方からの請求で使われることは十分考えられますので、証拠開示のタイミングは慎重に検討する必要があります。
ダブル不倫問題で損をしないために注意すること
1、慰謝料の見込額を見極める
(1) 慰謝料額の相場
慰謝料額の相場については、インターネット上にも多くの情報が掲載されていますが、不倫が原因で①離婚した場合、②別居した場合、③離婚も別居もしなかった場合の3つの類型に分けることができます。
また、一般に慰謝料の金額は、①>②>③の順に大きくなる傾向にあり、おおよそ30万円~300万円程度となることが多いです。
(2) 支払能力
もっとも、示談交渉の段階では相手方の支払能力(資力や収入など)によって、最終的な合意金額が左右されることは多々あります。
例えば、資産家や高所得者の場合は比較的高額な慰謝料が期待できますが、相手方が無職の場合や貯金がないようなケースでは、示談による多額の慰謝料獲得は期待できないことが少なくありません。
(3)支払意思
また、相手方が慰謝料請求自体を争う姿勢の場合などでは、相手方にそもそも慰謝料を支払う意思がないため、示談交渉段階では多額の慰謝料請求が期待できないといえます。
(4)まずは見通しを見極める
交渉を行うにあたっては、以上のような慰謝料額の相場による見込み額や相手方の支払能力や支払意思を見定め、より確実な見通しを立てることが大切です。
そのうえで、実際の請求額や最終的な合意金額を見極めることになります。
2、時効に注意
意外と忘れがちな時効についても注意が必要です。
不倫慰謝料請求の場合、知った時から3年、もしくは行為時から20年です。
また、ダブル不倫のケースでは特に気をつけなければならない点があります。相談者はすでに不貞行為があったことを知っていますが、Aさんの夫は、おそらくまだ不貞行為の事実を知らないと考えられますので、時効までの期間が、スタートしていないことです。
このタイムラグによって、相談者は時効で請求できないものの、相手方から請求してきたという最悪の事態にならないよう気をつける必要があります。