2、Aさんの息子からの請求
相談の(1)では、「Aさんの息子からAさんの夫の代わりに慰謝料請求」される場合があるかというご質問ですが、前提として、慰謝料請求をすることができるのは「配偶者に不倫をされた人」ですので、Aさんの息子が独立して慰謝料請求することはできません。
問題は、「Aさんの夫の代わり」慰謝料請求することができるか、すなわち、息子がAさんの夫の代理人になることができるかという問題ですが、示談交渉においては可能です。
もっとも、代理人となるためには、本人の意思による代理権の付与が必須となります。つまり、Aさんの夫が息子に対して代理権を付与しなければ、代理人になることはできません。
本件では、Aさんの夫が本件を把握し、その上で息子に代理権を付与しているか否かが不明なため、まずは、Aさんの息子が適正な代理人か否かを確認する必要があります。この確認を怠ったまま交渉をすると、示談が成立した場合であっても、その後に、Aさんの夫が合意を白紙にするリスクがあると言えます。
3、交際費としてもらっていた金銭の取り扱い
次に、慰謝料請求において交際費をもらったことで裁判上不利になるのかですが、不倫中の金銭のやり取りが、それだけで直ちに不利になることはありません。金額や経緯によっては慰謝料が増額される場合もありますが限定的と考えられます。
4、慰謝料請求を切り出すに当たっての注意点
(1)Aさんの夫が本件を知ってしまった場合は慰謝料請求を受けるリスクがある
相談の(3)では、相手方の出方を待った方が良いかというご質問ですが、確かに、慰謝料請求を切り出す際には、想定されるデメリットを理解しておく必要があります。
具体的には、Aさんの夫が本件を知ってしまう可能性が高まるということです。本件の相談のケースでは、Aさんの夫はまだ不倫の事実を把握していないとお見受けされますが、本件が大ごとになることによって、Aさんの夫の耳にも入る可能性が高まるということです。それによって、相談者の夫は、Aさんの夫から慰謝料請求をされる可能性が高まることになります。
(2)まずは、離婚をするか?結婚を継続するか?はっきりさせることが先決
とはいえ、相談者自身が、夫が慰謝料請求を受けることは構わないという考え方であれば、気にする必要はありません。
しかし、相談者が夫との夫婦関係を継続したいと考えている場合や、夫に十分な資力がないためにAさんの夫に慰謝料を支払った場合、相談者への慰謝料や養育費などの支払いがままならない可能性があるということも理解する必要があります。
そのため、相談者がAさんに慰謝料請求を行う場合には、まずは、ご自身の離婚問題とその後の生活をどうするかを十分に検討することが先決かと思います。