営業の最前線に立ち視点が変わった
当時、38歳になっていたため、本当に転職できるのか半信半疑でしたが、まずインターネットで長野県に特化している求人情報サービスを探し、私の会社にエントリーしてくれました。
「エントリーするとすぐに担当の方から連絡がきて、何社か紹介してもらったなかに今の会社がありました。まったくの偶然なのですが、新卒のときに入社を検討していた会社一つだったんです」
そんな経緯もあって、試しに応募してみたところ1週間もしないうちに「先方が会いたがっている」と連絡がありました。
そのとき、都内まで面接に行ったのが、Bさんが現在所属している部署の部長です。30分ほどという予定でしたが、いろいろな話で盛り上がり、結局2時間半くらい話していました。ただ、本人はあまり手応えがなく、不採用だろうと思っていましたが、すぐに会社から採用の連絡がきたのです。
Bさんの今の会社とのマッチングのポイントは、会社側が欧州市場に関する知見をもち技術的なことも分かる人材を探していたことです。製品は異なるものの、欧州向けの電気機器の商品開発に10年間携わってきたBさんのキャリアやイギリスの駐在経験は、願ったり叶ったりでした。
ただ、Bさんは営業に関してはまったくの未経験です。本社面接に臨む際もそこが一番の不安だったといいます。
ところが、役員面接の前に配属部署の要職の方々と面接した際、「営業経験がないのは不安かもしれないが、我々がしっかり教育するので、とにかく役員面接を頑張ってください」という温かい言葉を掛けてもらえました。
Bさんはそのときのことを、「とても心強かったのを覚えています。私としても、これまで一生懸命にやってきた仕事のスキルを活かして長野で働くことができる。不思議なくらいぴったりの会社でした」と振り返ります。
■視点が変わり新たなやりがいを発見 長野の人も自然も心地よい
転職した今の心境を聞くと、やりがいについて答えてくれました。
「実際のところ、初めての営業職ですから難しさは感じますが、周りの人たちが非常に大事にしてくださり、親切に教えてくれるので、なんとかやれています(笑)。また、こちらで仕事をしてみて、やはり欧州の市場は面白いと感じます。扱う商品が変わったこと、営業という最前線に立ったことで視点を変えられたのが大きいのかもしれません。今は、難しい市場のなかでどうやって成功するか、そこにやりがいを感じています」
生活面での変化については、自然に囲まれた暮らしがBさんの性に合っていたようです。
「妻もなじみのある土地に帰って来たからか、神奈川にいたときよりも生き生きしているような気がします(笑)。3歳の息子を公園に連れて行けば地元の子たちがすぐ仲間に入れて一緒に遊んでくれますし、親同士もすぐに打ち解けます。会社でもプライベートでも、長野の方は温かいなと感じます」と、順風満帆の様子です。
最後に、「転職してよかったと思うことは?」と聞きました。
「転職活動を始めるときは、転職するためには何かを犠牲にしなければならないのだろうと覚悟していましたが、自分は何も捨てることなく、いろいろなことがプラスに働いています」とBさんは力強く語ります。
収入面は、金額だけ見れば下がったものの、もともとBさんはあまりお金に執着しないほうで、どちらかといえばやりがいを優先させたいという思いがありました。そのため「100%、転職してよかったな」というのが正直な気持ちだそうです。
江口 勝彦
株式会社エンリージョン 代表取締役
キャリアコンサルタント