発達障がいが一般的に語られるようになりつつある昨今、子どもの症状を懸念する両親はいかに我が子と向き合うべきなのか。小児科医・鈴木直光氏が診断した症例をもとに解説します。

自分の子育てが悪いのかと悩む母親たち

発達障がいについて一般的に語られるようになったのは、つい最近のことです。今の親世代の多くは、発達障がいがどういうものかを知らずにこれまで過ごしてきました。ですから、受け入れることが難しいのは当然のことです。

 

じっくりと相談をし、納得してもらうことが必要です。今回も一度ここで中断し、父親には考えをまとめる時間を持ってもらうことにしました。

 

「検査の結果が出たら、また予約して来てください。では、受付の前でお待ちください。C君、さようなら」と診察を終えました。

 

私は、たいてい診察の時、親御さんや祖父母のことも聞きます。それは、症状をしっかりと把握するという目的と同時に、遺伝だからこそ幼少期から発症するのであって、発達障がいは決して「母親の育て方のせいではない」ということを強調したいからです。

 

本来ならば、お子さんの発達障がいに、手を取り合って向き合っていかなくてはならない夫や祖父母にまで「自分の育て方が悪い」と非難され続けている母親に、救いの手を差し伸べたいのです。

 

「お母さんの育て方のせいではない」というと、ほとんどの母親は涙を流します。

 

発達障がいのお子さんの接し方にはちょっとした工夫が必要であり、それは慣れるまでは少し大変かもしれません。だからこそ、父親を含む家族の協力が必要です。母親は、一人で抱え込まないで家族の協力をあおいでください。

 

抱え込んで不安になったり、疲れた顔をしたりしていると、お子さんに悪影響を与える危険性があります。そして、母親が笑顔で子育てができるよう、家族、特に父親はできるだけ子育てに協力してください。

 

家族の連携は発達障がいと向き合うための大きな力となるのです。一方、家庭と連携もとれない母親もいます。カサンドラ症候群のように一人だけ家庭内で浮いて、うつ病になっているケースも多く見られます。こういう母親はクリニックの心理相談でもサポートしていきます。

 

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鈴木 直光

筑波こどものこころクリニック院長・小児科医。小児神経学会認定医。博士(医学)。
1959年、東京都生まれ。
85年、秋田大学医学部卒。在学中YMCAキャンプリーダーで初めて自閉症児に出会う。
同年東京医科歯科大学小児科入局。
87〜88年、瀬川小児神経学クリニックで自閉症と神経学を学び、
栃木県県南健康福祉センターの発達相談で数々の発達障がい児と出会う。
いばらき発達障害研究会世話人。東京都専門機能強化型児童養護施設事業非常勤医師。
2011年、茨城県つくば市に筑波こどものこころクリニック開院。院長。

本記事は、2018年10月刊行の書籍『発達障がいに困っている人びと』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。最新の法令等には対応していない場合がございますので、あらかじめご了承ください。

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