商売が花開いた江戸時代、日本人が実践していた「商人道」と、最新鋭の「欧米ビジネス哲学」の共通点

交渉は日常に溢れている

一般的には交渉は別組織あるいは個人と契約を締結するために行うものをイメージされがちです。ただ、それだけが交渉というわけではありません。

 

もう少し広義の視点で考えれば、社内の他部署、上司、部下、同僚との関係でも交渉は存在します。契約締結は前提としてはいないものの、交渉めいたことは日々の仕事の中で展開されているのではないでしょうか?

 

例えば社内の他部署と、「この業務はおたくの部の担当範囲なのでは?」「いやいやそれはそちらで担当してもらわないと困ります」などのやり取りは日常茶飯事です。

 

上司と部下では、「A君今週中に本件の事業方針をまとめ、私に報告してくれないか?」「部長、生憎今週はB社に別のレポートを催促されています。それが完了してから事業方針のまとめに取り掛かってもいいでしょうか?」

 

同僚との間では、「今度来日するお客様とのやり取りは私がやるから、ホテルと車の手配はあなたが担当してくれない?」「いやいや私の方は今週C社の案件で手一杯なのでDさんに頼んでもらえませんか?」等々日々交わされるこのような会話も交渉的な要素を必ず含んでいるとは思いませんか?

 

またプライベートでは、家を借りる、土地を買って家を建てる、ご近所さんとの利害調整、遺産相続の際の親族間の利害調整なども立派な交渉と言えます。

交渉相手にはいい印象を残すべき

交渉の結果が勝ち負けで判断される場合、交渉妥結後のいい関係は決して長続きしません。交渉過程で交渉相手が自分あるいは自社に対し悪い感情を持ったらどうなるでしょうか?

 

「今回の交渉ではやられたから、そのうちいつかやり返してやる!」という強い恨みに似た感情が相手に残っているとしたら、仮に当初の事業でなんとか目論んでいた成果を得られたとしても、その後の協力関係が上手くいかなくなってギクシャクし、関係が徐々に形骸化し、最後は崩壊してしまうものです。

 

確かに、世の中にはそういう勝負事のような交渉によってビジネス関係を構築しては壊し、相手を変えながらそれを繰り返していくようなスタイルのビジネスパーソンもいます。

 

私も何人かそのようなオーナー経営者を目の当たりにしましたが、時間が経つといつの間にか業界から消えていくことが常でした。

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本記事は、2021年6月刊行の書籍『ビジネスパーソンのための超実践的交渉術 ⽇本⼈の交渉のやり⽅』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。最新の法令等には対応していない場合がございますので、あらかじめご了承ください。

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