あの手この手で諸外国の内部に浸透する工作
■中国の統一戦線工作
中国の工作組織は、習近平総書記を頂点にして、中共中央委員会と国務院が工作を統制する構成である。例えば、中共中央委員会は、中共中央対外連絡部、中共中央統一戦線工作部、人民解放軍などの重要な組織を統制している。
このなかで中央統戦部は、「秘密主義」「曖昧」「目立たない」と表現されている組織であり、日本人には馴染みの薄い組織だと思われるが、我が国の平和と安定を維持するためにはさけて通れない組織だ。中央統戦部は、中共に対する中国本土の国民、海外の中国人、世界中の広範な華僑コミュニティの忠誠を確保しようとする、中共中央委員会直轄の組織だ。なお、中共中央委員会は中共の最高指導機関でもある。
中央統戦部は本来、国内で共産党が敵と闘争する際、反共・非共の勢力も取りこんで敵に対する工作をおこなっている。統一戦線工作の目的は、中共を支持する人をできるだけ増やし、反対する人を減らすことである。その主な狙いは、中共の支配を確実にし、中共の権力独占が他の追随を許さないことを保証することだ。
現在、中央統戦部は国内のみならず、国外を含んだ広範囲にわたる工作を担当している。国外での工作展開のきっかけは、2015年5月に約9年ぶりに開催された「中央統一戦線工作会議(中央統戦会議)」であり、同会議において国外工作を重視することが決定された。この会議は、中共にとっての中央統戦部の制度的重要性を高める結果になった。会議後、習近平は「中国共産党統一戦線工作条例」を施行した。
国外工作においては、相手国内の中国に対する反対活動を切り崩し、賛成派を増やすために、違法合法を問わず活動している。中国は、あの手この手で諸外国の内部に浸透する工作もおこなっているが、その総元締めが中央統戦部なのだ。
中央統戦部の活動は、台湾、米国、日本、オーストラリア、ニュージーランド、カナダでもっとも顕著におこなわれ、西側の政府や社会に悪い影響を与えている。海外における中央統戦部の工作の狙いは、敵の陣営に侵入し、これを弱体化し、破壊し、最終的には敵を内部から破壊することだ。
また中央統戦部は、国外における中国のイメージアップと利益にかなう方向に世論を形成し、行動をうながすように影響工作を実施している。当然ながら日本に対しても影響工作をおこなっている。