これまで70歳まで繰下げ受給ができていた年金制度。が、75歳までと受給開始年齢が拡大されました。繰り下げることで、最大84%も支給額が増額されるといいます。本当にお得なのでしょうか。フィナンシャルプランナーの長尾義弘氏が著書『とっくに50代 老後のお金どう作ればいいですか?』(青春新書)で解説します。

年8.4%の高利回りで運用と同じこと

――すごいお得ですね。じゃあ、受取開始を75歳まで伸ばそうかな。そしたら、もっと多くもらえるんでしょう?

 

長尾FP 確かに、そうです。75歳まで繰り下げると、65歳で開始する場合と比べて、受け取る年金は84%も多くなります。

 

とはいえ、ここまで繰り下げるのは大変ですよ。75歳まで年金なしで暮らしていくということは、働き続けて生活費を捻出することになります。もしくは、すごく大きな貯蓄があるか。あなたの場合、働き続けなければいけませんよね。

 

――あ、そうですね。メリットの大きさに気をとられて、年金をもらわない期間、生活するのにお金がかかるのを忘れていました!

 

長尾FP それに平均余命との関係もあります。損益分岐点が後ろにずれるので、そこを超える前に寿命が尽きる可能性がより高くなります。わたしが試算したところでは、男性なら繰り下げは72歳程度まで。この年齢を超えると、得をしない可能性が高くなります。ただ、女性の場合は長く生きるので、75歳まで繰り下げることを考えてもいいですね。

 

■年金をもらわないと、生活費が数万円足りない場合もありますよね?

 

――わたしは基礎年金と厚生年金がもらえるんですよね。どちらの年金も繰り下げ受給ができるんですか?

 

長尾FP どちらか一方だけでも、両方繰り下げることもできます。生活に必要な金額と照らし合わせて考えるといいでしょう。

 

これに対して、繰り上げ受給は両方を同時に行う必要があります。とりあえず60歳から基礎年金だけをもらって、厚生年金は65歳からにしようかな、といったことはできません。

 

――なるほど。では夫婦いっしょに繰り下げ、繰り上げをしなければいけないんですか。それとも、別々でOK?

 

長尾FP 夫婦別々にできますよ。どちらか一方だけを繰り下げたいという場合、一般的には妻のほうが長生きをすることが多いので、妻の年金を繰り下げるほうがいいでしょうね。65歳から夫の年金だけを受給し、妻の分は70歳まで我慢して取っておくという考え方です。

 

ただし、妻の年金額がかなり少ないと、増額される分も小さくなります。2人の年金額を照らし合わせ、年齢差も考慮して夫婦のベストの形を考えましょう。

 

――繰り下げ受給をするときには、「何歳まで繰り下げます」といったように、事前に届け出をしないといけないんですか。

 

長尾FP いえ、まったく必要ありません。年金の請求を行わなかったら、それで繰り下げ受給ということになります。しばらく頑張ってはみたものの、生活が苦しいからやっぱり受け取りたいといった場合は、年金請求書を出すだけで受け取れるようになります。

 

また、たとえば68歳まで繰り下げたけれど、病気や介護などで大きなお金が必要になった。こうした場合は、65歳から現時点までの3年分を一括で受け取ることもできます。ただし、繰り下げ受給ではなくなり、65歳からの支給ということになって増額はされません。

 

また、老後資金が足りなくなってきたときには、途中から年金の支給を開始することができます。その場合は、その時点での増額された金額を生涯受け取ることができます。

 

――現実問題として、毎月、生活費が数万円足りないってこともあり得ますよね。こうした場合、繰り下げ受給をやらないほうがいい?

 

長尾FP いえ、貯蓄を切り崩してでも、繰り下げ受給をするのがおすすめです。なぜなら、低金利時代なので貯蓄で得られる利益はほんのわずか。しかし、繰り下げ受給は1年ずらすだけで、利率が8.4%も良くなるんですよ。つまり、年8.4%という高い利回りで運用しているのと同じことなんです。断然、こちらのほうがお得ですよ。

 

長尾 義弘
フィナンシャルプランナー

 

 

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    本連載は、長尾義弘氏の著書『とっくに50代 老後のお金どう作ればいいですか?』(青春新書)より一部を抜粋し、再編集したものです。

    とっくに50代 老後のお金どう作ればいいですか?

    とっくに50代 老後のお金どう作ればいいですか?

    長尾 義弘

    青春出版社

    投資をしろだの、iDeCoだNISAだのと、いまの世の中、お金を増やしたり貯めたり守ったりの話があふれています。 一方で、「そんなこと、いまさら言われても遅いんだよ!」と憤ったり、暗い気持ちになっている50代は少なくありま…

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