夫婦2人で老後生活をおくるうえで必要と考える「最低日常生活費」は、月額22万1000円です。毎月3万円の赤字なら30年間で1000万円、毎月5万円なら2000万円が足りなくなります。フィナンシャルプランナーの長尾義弘氏が著書『とっくに50代 老後のお金どう作ればいいですか?』(青春新書)で解説します。

「公的年金だけでは不十分」という理由が断トツの1位

■みんな、退職するまでに、どれくらい貯め込んでるもんですか?

 

――わたしはいま55歳で、あと5年、10年もすると定年になって退職になります。老後の暮らしがだんだん近づいてきているんですが、じつはとても不安なんです。妻と2人で生活していくのに、お金は足りるんだろうか、ちゃんと暮らしていけるんだろうかと……。FPの長尾さん! いろいろ相談に乗ってください!

 

長尾FP あなたくらいの年代の人なら、老後に向けて経済的な不安を抱えているのは当たり前です。でも、実態をわかっていない人が多くて。定年退職後、毎月どれほどのお金が必要で、実際にどれほどまかなえるのか、はっきりしていますか?
 

――いや、それもよくわからないから不安なんです。とにかく、iDeCo(イデコ)とかNISA(ニーサ)とかいう仕組みがお得だとよく聞くので、まずはやってみたい。上手な運用の仕方を教えてください。

 

長尾FP なるほど……。老後の生活について、これまであまり真剣に考えてはいなかったようですね。iDeCoとNISAはとてもお得なので、ぜひやったほうがいいでしょう。しかし、その前に老後の暮らしとはどういったものなのか、しっかりイメージしておくことが大切です。

 

あなたのように、漠然とした不安を感じている人は非常に多いものです。生命保険文化センターの2019年度の意識調査によると、「自分の老後生活に不安感あり」と答えた人は8割を超えています。ほとんどの人が不安なんですよ。

 

男女別では、女性のほうが不安な人がより多くなっています。一般的にいって、女性は長生きするのが理由のひとつかもしれませんね。

 

では、何に対して不安なのかというと、「公的年金だけでは不十分」という理由が断トツの1位になっています。健康上の不安がそれに続きますが、3位と4位はまたお金に関する不安で、「退職金や企業年金だけでは不十分」「自助努力による準備が不足する」という理由があげられています。

 

ほかの同じような調査を見ても、ほとんどの人が老後の生活に不安を感じており、やはりその理由のトップはお金のことです。

 

――みんな、お金のことが心配なんですね。自分だけではなかったことに、ちょっと安心したような……。ところで、わたしと同じような年代の人は、お金をどれほど貯め込んでいるものなんでしょうか。

 

長尾FP 重要なのはあなた自身のことですが、年の近い周りの人たちはどうなのか、というのも気になるところかもしれませんね。PGF生命が実施した「2021年の還暦人に関する調査」では、平均貯蓄額は3026万円となっています。「還暦人」とは、その年に60歳を迎えるという意味のようです。

 

――あれ? けっこう貯めてるなぁ……。わたしはその半分足らずなんですが……。

 

長尾FP この平均額はかなり多いという感じがしますよね。でも、これは統計のマジックにすぎません。ものすごく貯蓄の多いごく少数の人が、平均をぐーんと引き上げているんですよ。

 

じつは同じ調査で、ほぼ3人に2人の貯蓄額が2000万円未満、同じく3人に1人が300万円未満、4人に1人が100万円未満と答えています。お金を持っている人はとても持っている。しかし、その一方で、貯めていない人はほとんど持っていない。この二極化が進行しているのがわかります。

 

次ページ老後の暮らしは「収入と支出とのバランス」

本連載は、長尾義弘氏の著書『とっくに50代 老後のお金どう作ればいいですか?』(青春新書)より一部を抜粋し、再編集したものです。

とっくに50代 老後のお金どう作ればいいですか?

とっくに50代 老後のお金どう作ればいいですか?

長尾 義弘

青春出版社

投資をしろだの、iDeCoだNISAだのと、いまの世の中、お金を増やしたり貯めたり守ったりの話があふれています。 一方で、「そんなこと、いまさら言われても遅いんだよ!」と憤ったり、暗い気持ちになっている50代は少なくありま…

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