3歳で自閉症と診断されてから、現在は大手企業の正社員として立派に働く息子。発達障がいを持ちながらも豊かな人生を送る子どもの、成長を綴った教育実録をお届けします。

子どもの幸せとは

子どもの幸せとは何なのか?

 

私が、障がいを持つ子どもの教育を考えた時に、突き当たった問題がこの問題でした。

 

この子が幸せに生きていけるにはどうしたら良いのだろうか?

 

当時、自閉症の子どもに対しての教育方針が前述のように「子どもの行動を全て受け入れ、躾をせずに、子どものなすがまま自由気ままにし、子ども自ら行動する事を待ち、教育していく事が子どもにとって良い」と言われていましたが、私は、この考え方に素直に納得がいきませんでした。

 

次男には、禁止し、長男には許す。そんな教育が通用するのか? 障がいの子の突飛な行動を全て受け入れ、温かく見守る事が子どもの幸せにつながるのだろうか?

 

この子は、私達にとって何でもないような世界、普通に生活していれば当然ある全ての音に対しても、パニックを起こすほど嫌な感覚として受け取っている。車に対して真正面から飛び込んで行ってしまい、危険である事も何もわかっていない。親を親とも認識していない。それら、数々のおかしな行動は、果たして子どもが好き好んで、そのような行動をとっているのでしょうか? 私は疑問を持ちました。

 

これらの行動は、障がいによる行動では? 何かが違う。子どもは、遊びの楽しさを感じられないのは、何かが欠けている。このような宇宙人のような感覚しか持たない息子も、私達と同じ世界の中に生きて行かなければならない。これからの長い人生、どの様にして生きていく事がこの子にとって幸せなのだろうか?

 

私達の生きている世の中には、言語があり、楽しい、悲しいという感情の世界があり、美しいという情緒世界があり、もっともっと広い世界に生きています。それなのに。

 

長男もこの世界の中の一員であり、感情豊かな人間になって、この素晴らしい世界を楽しんで生きていってもらいたい。しかし、現在の長男の世界観は狭く、興味を持つ意欲もないのでこのままの感覚を維持し成長し成人になっても、本人にとっても、生きづらい世の中になり感覚的に息苦しさを感じてしまうのではないかと思いました。

 

あるがままを受け入れる世界とは、温室で育てるようにして、一般社会と分離して生活する事に繋がらないだろうか?

 

この子の困った行動を親だったら受け入れて許す事が出来ても、親亡き後、他人は受け入れる事は難しいだろう。子どもの行動を許し、いつまでも盾となって守ってやるわけにはいかない。

 

親がいなくなって世の中に放り出された時、一人でどんな世の中でも対処し、対応出来る力をつけておいてあげる事が、この子の幸せにつながり、親の役目ではないだろうか?

 

何とかして感情豊かで情緒のあるこの世の中の生活を受け入れられるようになり、一般社会の中で、普通に生活出来るようにしてあげなければと考えました。

 

これが、子どもの幸せに対する私の考え方でした。そして、教育のスタートでした。

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よしえつ さえ

1948年、長野県伊那市生まれ。東京都在住。自閉症の教育法が定まらなかった時代、世界に名だたる小児神経学の医師や優秀な先生方と巡り合う。その先生方の指導を家庭生活の中で実践してきた結果、知的障がいがあり、言語能力2歳レベルしかない自閉症の息子を大手企業の正社員となるまでに成長させることができた。 現在はその教育経験を活かし、発達障がい者の教育指導を行っている。

本記事は、2020年12月刊行の書籍『言語能力2歳の自閉症 正社員となる』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。最新の法令等には対応していない場合がございますので、あらかじめご了承ください。

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