本記事では、桃山学院大学経済学部で理論経済学の教鞭をとる中村 勝之 教授が、大学という教育現場の知られざる素顔を、経済学の観点から切り取り、解説します。

四年制大学の進学率が高まる一方、短大は絶滅危機に

大学というヒト・モノ・カネ・情報の集積する「場」を1つの市場と考えたとき、そこへの進学を選択する者は高等教育に対する需要者である。最初に、大学業界の需要サイドの現状を示すいくつかデータを確認しておこう。

図0-1は、1978~2020年度における四年制大学(以下、四大と略記)および短期大学(以下、短大と略記)への進学率の推移を示している。

 

 

まず、四大の推移から確認すると、1978~86年度にかけてわずかながら低下する。それ以降の約20年間は右肩上がりに上昇し、2009年度には50%を超える。そこから横ばいになりつつも2014年度から緩やかながら再び上昇し始め、2020年度には54.4%に達している。

 

一方、短大の推移を確認すると、1978~84年度までは四大と同様にわずかに微減傾向だったものがその後緩やかな上昇軌道を描く。しかし、その動きも1994年度の13.2%をピークに減少の一途をたどる。2016年度にはついに5%を割り込み、2020年度は4.2%となっている。

 

近年、四大・短大への進学率が過去最多を更新したと新聞などで報道されるが、それは短大進学率の低下を上回る四大進学率の上昇にあることがこの図から読み取れる。一般に、同一年齢層のうち四大・短大・専門学校などを含めて、中等教育段階から高等教育段階へ進学する割合が高まる現象を高等教育の大衆化という。

 

マーチン=トロウによれば、いわゆる高等教育の大衆化は進学率15%未満のエリート段階、15%以上50%未満のマス段階、そして50%以上のユニバーサル段階という3つの段階を経て実現する(※Trow,M.A.(著)天野郁夫・喜多村和之(訳)『高学歴社会の大学−エリートからマスへ』東京大学出版会、1976年 )。これ自体は世界的趨勢であり、日本では既に1960年代にはエリート段階からマス段階へ移行していた。

 

図0-1を改めて見ると、1978年度において四大・短大への進学率の合計は38.4%でかなりマス段階が進行しており、2004年度にはこの数値が49.9%に達する。つまり、日本の高等教育は2000年代半ばには本格的なユニバーサル段階に移行して今に至っていると言える。

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本記事は幻冬舎ゴールドライフオンライン連載の書籍『学生の「やる気」の見分け方』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋したものです。最新の法令等には対応していない場合がございますので、あらかじめご了承ください。

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