3歳で自閉症と診断されてから、現在は大手企業の正社員として立派に働く息子。発達障がいを持ちながらも豊かな人生を送る子どもの、成長を綴った教育実録をお届けします。

「違い」・原因は親の育て方の問題ではない

興味は換気扇や扇風機など回るもの、機械物。

 

親が名前を読んでも振り向きもしない、親の元に近寄っても来ない。親を親とも思わないような行動で子どもが何を考えているかわからない、子どもの気持ちが読めない状況に私は戸惑っていました。

 

次男は、すぐ寝るのに対し、長男は、夜、寝付きが悪く親子で睡眠不足。長男は、睡眠不足から、畳の上にごろんと横になり、小さなミニカーを動かして、回るタイヤだけをじっと見て日がな一日過ごす。

 

それなのに、一歩外に出れば、鉄砲玉のように飛び出してしまい、親の行く方向と反対に走って行ってしまい、車に飛び込んでいってしまいそうになる。目を離すことや手を離すことが出来ず、買い物時財布からお金を出す時でさえ、きつく長男の手を握り、離すことが出来ませんでした。

 

ある日、ちょっと手を離したすきに、神隠しのようにいなくなってしまいました。名前を呼んでも、親の呼ぶ声の方に戻ってくるという事をしないので、何処に行ってしまったか、全く見当もつきません。警察に連絡し、パトカーに乗りおまわりさんと一緒に探していたら、近所の他人の家の2階に上がり込んで泣きもせずポカンとしていました。

 

また、公園に連れて行くと、あっという間に走って行ったかと思うと、全く見ず知らずの人達が広げていたお弁当の一つを食べてしまいました。向こうの人も開いた口がふさがらないという状態でした。躾などあったものではありません。注意しても理解せず、母親にも人間にも興味がなく、こちらの言っている事は全く理解せず、唸るだけの息子は、人間世界からかけ離れたオオカミに育てられたような子どもでした。

 

このように、自閉症は、幼児期の頃から、言葉だけでなく、運動面での発達においても、すべての面において、健常な子どもとこんなにも違うのです。

 

決して、親の育て方の問題や砂糖の取りすぎ、テレビの見せすぎが原因で、自閉症になったのではないと思いました。

自ら知恵をつける事は難しいのでは?

興味を持つのは小さなミニカーだけ、それ以外のおもちゃに興味を示すという事もなく、「遊ぶ」という事が出来ない。「子どもからのアプローチがない」「真似をしない」「目を合わせない」「指差ししない」「這い這いしない」など次男との大きな違い。この状態のまま何もしないで自由にさせていて本当に良いのだろうか? 長男は、「言葉」があるという事さえ理解していないようで「言葉」を聞くどころか、あらぬ方向を見たままです。何も進歩がありません。

 

次男との違いから、長男は、自ら知恵を吸収していく事は難しいのではないかと思い始めました。ならば、母親の私の方から、あの子の世界を広げ、楽しい遊びを教え、遊びを通して知恵をつけさせていく方法が必要ではないかと私は考え始めました。

 

当時は、自閉症は、親の責任だという考えが浸透していたので、近所の人から宗教団体に誘われるなど、周りから追い詰められていました。子どもの心が読めず戸惑う毎日、子どもの幸せについて本当に悩みました。どう考えたら子どもにとって「幸せ」なことなのだろうか?

次ページ子どもにとっての、本当の幸せとは?

本記事は、2020年12月刊行の書籍『言語能力2歳の自閉症 正社員となる』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。最新の法令等には対応していない場合がございますので、あらかじめご了承ください。

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