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事実婚カップルがやっておくべき「5つ」の相続対策
これまでの説明では、「事実婚」の相続はデメリットばかりと思われるかもしれません。
しかし、「法律婚」同様の権利が与えられているものや、生前に準備・対策することでいざという時に対処できることもあります。
生前贈与
贈与とは、個人から個人へ無償で財産を贈ることを指します。その個人とは、親族に限りません。
廃止されるのではないかと懸念されている「暦年贈与」ですが、年間の贈与額が110万円までなら贈与税が非課税となります。ただし、相続開始前3年以内の受遺者に対する贈与には、相続税が発生する可能性があります。
「事実婚」パートナーに「暦年贈与」するなら、早めに始めたほうが良いでしょう。
遺言証書を作成し遺贈する
遺言証書は、相続人による遺産分割協議に優先されます。法的に認められた遺言証書は「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」の3種類です。
特に「事実婚」カップルの住まいが共有名義の場合、遺言証書は重要です。遺言証書がないと、被相続人に相続権のある親族がいる場合、被相続人の持分が親族に相続される可能性があり、実質的にパートナーは自宅に住めなくなります。
遺言書には「私の持分○/○を(パートナーの氏名)に遺贈する」と記しておきましょう。
ただし、被相続人の親が存命の場合や先妻・先夫との間に子がある場合、法で保障された最低限の取り分「遺留分」があり、「遺留分侵害請求」される可能性はあります。
それでも、「遺留分」は基本的に「法定相続分の1/2」ですし、「遺留分侵害請求」されないという可能性も残ります。
死因贈与する
財産を贈与したい人と生前に契約を交わすことで、被相続人の相続開始を機に行われる贈与です。契約の証拠として「死因贈与契約書」を作成しておいたほうが良いでしょう。
ただし、こちらも、相続人から「遺留分」を主張される可能性があります。また、「事実婚」パートナーは、相続税の2割加算の対象となります。
「特別縁故者」として申し立てる
被相続人に法定相続人がいなければ、被相続人の「特別縁故者」としてパートナー自身が申し立てる方法です。「被相続人と生計を同じくしていた人」「被相続人の療養看護につとめた人」「被相続人と特別密接な関係にあった人」が申し立てできます。
まず、被相続人の最終住所地を管轄する家庭裁判所に、「相続財産管理人」の選任を申し立てます。相続財産管理人が選任され、相続人調査が行われて相続人の不存在が確定し、「特別縁故者」の申し立てが認められると、遺産の全部または一部が受け取れます。
「特別縁故者」への財産分与の申し立ては、「相続人不存在の確定後3ヵ月以内」に行わねばなりません。
遺族年金や死亡保険金は請求できる
「事実上、婚姻関係と同様の事情にあった者」と認められれば、遺族年金は受け取ることができます。
国民年金の「遺族基礎年金」と厚生年金保険の「遺族厚生年金」がありますが、いずれも問い合わせ・請求先は、お近くの年金事務所または街角の年金相談センターとなります。
また、被相続人が被保険者・保険料の負担者である生命保険や損害保険の死亡保険金を、「事実婚」のパートナーを受取人とすることで、財産を渡すことができます。
ただし、死亡保険金の非課税枠「500万円×法定相続人の数」は、相続人ではないので適用できません。
婚姻制度や税法は「時代にあった」改正が求められる
いま、世界の婚姻制度は「夫婦別姓」が主流で、「夫婦同姓」は日本のみといわれます。また、「事実婚」を認めたことで少子化を脱した国もあります。
日本の婚姻制度もいずれ変わるかもしれず、それに伴って相続税法も改正されるかもしれません。税制改正は毎年行われています。判断に迷ったら、専門家へのご相談をおすすめいたします。
岡野 雄志
岡野相続税理士法人
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