(写真はイメージです/PIXTA)

1985年5月に男女雇用機会均等法が成立するなど、1980年代以降、女性の社会進出にともない結婚観も大きく変化しました。そのようななか、さまざまな理由で「非婚」を選んだ人にとって悩みのタネとなるのが「相続問題」です。そこで今回、岡野相続税理士法人の岡野雄志税理士が、親族との争いを生まず、うまくパートナーに相続するためにやっておくべき生前対策を解説します。

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    「事実婚」と「法律婚」の相続…法律の違いは?

    「事実婚」カップルの相続の場合、法律上できないこと、制限されていること、条件付きでできることなどがあります。相続発生時にパートナーの親族と揉めないためにも、その点を予めきちんと押さえておきましょう。

     

    法定相続人にはなれない

    民法第890条には、「被相続人の配偶者は、常に相続人となる」と定められています。被相続人とは財産を残して亡くなった方のことで、配偶者はその夫または妻のことです。

     

    ただし、「法律婚」による夫または妻に限られます。「事実婚」による夫または妻には相続権がありません。

     

    遺産分割協議に参加できない

    遺産分割協議は、法定相続人全員で遺産配分について話し合う場です。「事実婚」による被相続人の伴侶は法定相続人ではないので、遺産分割協議で自らの意思や意見を発言できません。

     

    「パートナーシップ証明書」を取得しても相続権はない

    平成27(2015)年11月5日、東京都渋谷区と世田谷区が先陣を切り、「パートナーシップ制度」を導入しました。

     

    LGBT(Lesbian Gay Bisexual Transgender)カップルも公的に結婚が認められる、多様性社会の画期的制度として注目され、今や全国の市区町村に広がりました。

     

    この制度による証明書等を取得すると、たとえば、同性婚カップルが住居の賃貸契約をしようとして断られた場合、行政が是正勧告し、その事業者名を公表できるなどの配慮がされています。

     

    しかし、残念ながら法的な婚姻の効力はなく、したがって、法定相続人にはなれません。

     

    口座凍結を解除できない場合がある

    金融機関は口座名義人の死を知ると、その口座を凍結し、入出金や送金ができなくなります。遺産分割前に相続人の誰かが預貯金を下ろしてしまうなどのトラブルを防ぐためです。

     

    しかし、故人の葬式費用や医療費などの支払いがある場合、預貯金を下ろせないと困ります。そこで、「仮払い」という制度があるのですが、いずれの金融機関も原則、相続人全員の承諾が必要となっていて、相続人ではない「事実婚」のパートナーが一存で行うことはできません。

     

    遺産分割が決着後、口座凍結を解除できるのも、相続人、遺言書執行者、相続財産管理人、相続人から依頼を受けた人のいずれかです。

     

    なお、後述しますが、「事実婚」パートナーが被相続人から財産の遺贈を受ける「受遺者」であれば、凍結解除は可能です。

     

    また、最近はネット化が進み、通帳や証券が廃止されています。「法律婚」カップルも同様ですが、相続発生や認知症発症に備え、暗証番号を伝えておくことも大切です。相続税申告後に隠し口座が発覚すれば、税務調査や追徴課税の可能性もあり、親族にも迷惑をかけかねません。

     

    基礎控除や配偶者控除などが適用できない

    相続税の基礎控除額は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」もしくは法定相続分で計算します。「事実婚」パートナーは法定相続人ではないので、法定相続人の数に加えられません。

     

    相続財産の評価額1億6,000万円まで非課税となる「配偶者控除」も、「法律婚」の配偶者でないと適用できません。

     

    ただし、「配偶者短期居住権」に関しては、「事実婚」のパートナー(内縁の妻)にその権利が認められた判例もあります。また、被相続人の自宅の土地や事業用地の相続税評価額を最大80%減額できる「小規模宅地等の特例」も、親族に限られ、適用不可です。

     

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