(写真はイメージです/PIXTA)

相続が発生した場合に、不動産などの遺産について相続人全員の共有名義とするケースもあります。しかし安易に相続人全員の共有名義とすることはあまりおすすめできません。相続に詳しい、Authense法律事務所の堅田勇気弁護士が解説していきます。

共有相続した不動産の共有を変更する方法

ここまでお伝えしてきたように、共有相続した不動産はそのままにしておくと、さまざまなトラブルの原因となりかねません。そのため、どこかのタイミングで共有を解消しておくことが望ましいでしょう。

 

不動産の共有を解消するには、主に次の方法があります。

 

他の共有者の共有持分を買い取る

不動産の共有を解消するための最もシンプルな方法は、他の共有者の共有持分を買い取ることです。たとえば、長男と長女とで不動産を共有している場合に、長男が長女の持分を正当な対価を支払って買い取ることなどが考えられます。

 

ただし、当然ながら長女が共有持分を手放したくないと主張している場合にまで無理に買い取ることはできません。あくまでも、売買をすること自体やその対価などについて両者で合意ができることが前提です。

 

また、長男に長女の持分を買い取れるだけの資力がなければ、この方法を取ることはできません。

 

なお、共有持分を売却した長女には譲渡所得税が課される場合がある他、仮に市場価値の半額以下など著しく低い対価で買い取った場合には長男に贈与税が課税される可能性があります。対価の額については、あらかじめ弁護士や税理士などの専門家へ相談すると良いでしょう。

 

自己の共有持分を売却する

自己が共有状態から抜け出したい場合には、自分の共有持分を他の共有者へ売却したり、第三者へ売却したりすることが考えられます。ただし、他の共有者に無理に買い取らせるなど押し付けるようなことはできません。

 

また、他の共有者に共有持分を買い取るだけの資力がなければこの方法を取ることは困難です。他の共有者が買い取れない場合には、第三者への売却を検討することとなります。物件全体の売却には他の共有者全員の同意が必要である一方で、自己の共有持分のみの売却であれば他の共有者の同意などは必要ありません。

 

しかし、共有持分については買い手を見つけるのは困難のため、第三者への売却は難しい可能性が高いでしょう。

 

土地を分筆する

共有となっている不動産が土地である場合には、土地を2筆に分けるなどの分筆を行い、それぞれを共有者が取得することも検討できます。たとえば、「XX1番地」という広い1筆の土地を長男と長女で共有していた場合に、これを「XX1番地1」と「XX1番地2」という2筆の土地に分けて、1番地1を長男が、1番地2を長女が取得するといった具合です。

 

ただし、共有していた不動産が分筆をしても使い勝手を損ねない程度に広い土地でなければ、この方法の選択は合理的ではないでしょう。分筆の結果、建物が建築できない程度の狭い土地にしてしまっては活用方法がかなり制限され、土地の価値が大きく下落してしまいかねないためです。

 

また、分筆をするには測量や登記などが必要となるため、相当の費用が必要となります。

 

共有者全員で不動産を売却する

共有者全員の同意が得られるのであれば、全員で協力をして不動産をまるごと第三者へ売却することも選択肢の一つとなります。

 

共有物分割請求訴訟を行う

上記のいずれの方法も難しい場合ですと共有物分割請求訴訟を行うしかありません。共有物分割請求訴訟とは、裁判所を通じて共有状態の解消を行う訴訟手続です。この訴訟を提起することで、裁判所にどのような方法で共有を解消するのかの決断を下してもらうことができます。

 

ただし、必ずしも訴えを提起した人の希望どおりに判決がなされるわけではない点には注意が必要です。たとえば、長男としては長女の共有持分を買い取ることで共有の解消を図りたいと考えていても、裁判所が物件全体を売却してお金で分けるよう判決を下す可能性もあるということです。自分の希望する形で共有解消ができる可能性を上げるためには、共有物分割訴訟を提起する前に、共有解消などに詳しい弁護士へ相談することをおすすめします。

 

◆まとめ

共有相続は、遺産分割の話し合いがまとまらない場合に「とりあえず」選択することの多い分割方法です。

 

この方法を取ることでその場はいったん丸く収まるかもしれませんが、不動産を共有にしてしまえばその後さまざまトラブルの原因となりかねません。いったん共有相続にしてしまった不動産の共有状態を解消するには、遺産分割協議以上に労力がかかることも多いといえます。

 

共有相続は結局のところ、問題の先送りにしかならないケースが少なくないのです。

 

 

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