(※写真はイメージです/PIXTA)

公正証書遺言とは、公証人の関与を受けて作成する遺言書です。作成には手間や費用がかかるものの、もっとも無効となりづらく確実な遺言方式であるといえます。そこで本記事では、相続に詳しいAuthense法律事務所の堅田勇気弁護士が、公正証書遺言作成の流れや必要書類について解説します。

「公正証書遺言」とは?

遺言とは、自分が亡くなったあとの財産の行き先などを決めておくものです。遺言の効力が発生するのは、遺言者が亡くなったときですので、そのときに遺言者の真意を直接聞くことはできません。そのため、遺言の方式は、民法で厳格に定められています。この遺言方式のひとつが公正証書遺言です。

 

公正証書遺言とは、公証人の関与のもとで行う遺言です。費用や手間はかかるものの、無効になりづらい点が最大のメリットであるといえるでしょう。公正証書遺言を作成するには、まず遺言者が公証人と2名以上の証人に対して遺言の趣旨を口授します。これを公証人が筆記して遺言者と証人に読み聞かせるか閲覧させ、各自が署名押印をすることで公正証書遺言が完成します。

公正証書遺言の作り方の手順

公正証書遺言を作成するまでの基本の流れは次のとおりです。なお、弁護士などの専門家へサポートを依頼した場合には遺言の内容を検討するにあたってアドバイスが受けられるほか、公証役場とのやり取りも代行してもらえます。そのため、専門家を介した場合には自分ですべての手続きを行う必要はありません。

 

1.遺言の内容を検討する

はじめに、作成する遺言の内容を検討します。たとえば、「自分の亡きあとは全財産を妻に相続させたい」「長男には自宅不動産を相続させて、二男には預金を相続させたい」「お世話になったA団体へ遺産を寄付したい」などが挙げられます。ただし、相続にはさまざまなルールがあり、遺言の内容次第では、トラブルの原因となってしまうかもしれません。

 

その代表的なものに「遺留分」があります。遺留分とは、配偶者や子など一定の相続人に保証されている、相続での最低限の取り分のことです。

 

この遺留分を侵害した内容の遺言書を作ることもできます。ただし、相続が起きたあとで遺留分を侵害された相続人から、遺産を多く受け取った人に対して、遺留分相当の金銭を支払うよう請求(「遺留分侵害額請求」といいます)がなされるというトラブルが発生するかもしれません。

 

せっかく作成をした遺言書がトラブルの原因となることなど、誰しも避けたいことでしょう。そのため、遺言内容の検討は自分ひとりで行うのではなく、弁護士などの専門家のサポートを受けて行うことをおすすめします。

 

2.必要書類を収集する

遺言内容の検討と同時進行で、必要書類を収集します。公正証書遺言の作成に必要となる書類はのちほど解説しますので、そちらを参照してください。

 

3.公証役場へ事前相談に出向く

遺言内容がある程度固まり、必要書類もある程度揃ったら、遺言書を作成する公証役場へ事前相談に出向きます。

 

通常どおり公証役場へ出向いて遺言書を作成する予定である場合には、管轄に制限はありません。たとえば、東京都に住所のある人が、愛知県の公証役場で遺言書を作成してもよいということです。

 

しかし、打ち合わせの利便性などを考えると、自宅や勤務先などに近い公証役場を選択することが一般的でしょう。公証役場へ出向く際には、いきなり出向くのではなく、あらかじめ電話で予約しておくことをおすすめします。

 

なぜなら、突然出向いた場合には公証人が不在であったり予定が埋まっていたりして、対応してもらえない可能性があるためです。事前相談の際には、遺言内容のメモとともに収集済の書類を持っていきましょう。この時点で書類に不足があると公証人から追加取得の指示がなされるため、これに従って不足書類を集めます。

 

4.証人を検討する

公正証書遺言を作成するには、証人2名以上の立会いが必要です。証人には欠格事由があり、次の人は証人となることができません(民法974条)。

 

1.未成年者

 

2.推定相続人(遺言者が亡くなったときに相続人になる予定の人)及び受遺者(遺言書で財産を渡す相手)並びにこれらの配偶者及び直系血族

 

3.公証人の配偶者、四親等内の親族、書記及び使用人

 

証人には、遺言書の内容がすべて知られることとなります。そうすると、信頼できる相手として頭に浮かぶ相手は、ほとんどが「2」の欠格事由に当てはまってしまうことでしょう。証人の適任者がいない場合には、公証役場から紹介を受けることができます。

 

また、公正証書遺言の作成サポートを専門家に依頼した場合には、専門家の側で証人を手配してくれることもあります。

 

5.文案を確認する

事前相談後には公証人が遺言書の文案を作成し、これを提示してくれることが一般的です。あらかじめこの文案を確認し、自分の意図とずれていないかよく確認しましょう。

 

6.作成日を予約する

公証人の作成した文案に問題がなければ、公正証書遺言を作成する日を予約します。作成当日には遺言者自身のほか、公証人と証人とのスケジュールを合わせなければなりません。そのため、候補日を複数挙げられると調整がスムーズでしょう。

 

7.予約当日に公証役場へ出向く

予約当日に公証役場へ出向きます。当日は改めて本人確認が行われたあとに、遺言者による遺言内容の口授や公証人による文案の読み上げ、遺言者と証人による署名捺印などが行われます。公正証書遺言の作成は法律の規定に則って厳格に行われるので、公証人の指示に従いましょう。これで公正証書遺言の作成が完了です。

 

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