税金の払いすぎが発覚!過払いの相続税を取り戻す方法【弁護士の解説】 (写真はイメージです/PIXTA)

相続税の場合、計算誤りなどの他、遺留分侵害額請求や未分割であった遺産の分割など、相続特有の事情によって税金を納めすぎていた、というケースがあります。過払いの相続税を取り戻す「相続税の更生の請求」について、相続に詳しい、Authense法律事務所の堅田勇気弁護士が解説します。

相続税の更正の請求とは

相続税の更正の請求とは、払い過ぎた相続税を還付してもらうための手続きです。納税をした相続税が本来支払うべき相続税よりも過大であった場合に、更正の請求をすることで差額を返してもらうことができます。

 

これに対して、税金の支払いが不足していた場合に追加で税金を納める手続きや、還付を受け過ぎてしまった場合に過大な還付分を返還する手続きを、修正申告といいます。

 

また、そもそも申告書を期限までに出していなかった人が期限後に申告書を出すことを、期限後申告といいます。

相続税の更正の請求が関係するのはどのようなとき?

 

相続税について更正の請求をすべき場面は、次のようなときです。それぞれ詳しくお伝えしていきましょう。

 

相続税の計算が間違っていた場合

計算の誤りや計算ルールの勘違いなどから、税金を支払い過ぎていた場合です。

 

たとえば、相続開始時点で実際には3,000万円であった貸付金を誤って5,000万円と申告してしまった場合や、賃貸物件を自用の物件として高く評価してしまった場合、土地の評価額が下がる制度を適用しないまま申告してしまった場合などがこれに該当します。

 

相続税特有のものではなく他の税金でも起きうるという点で、この後で解説する4つのケースとは異なります。

 

認知などで相続人に異動があった場合

認知とは、嫡出でない子(婚姻した夫婦間の子でない子)と父親との間の法律上の親子関係を確認する手続きです。

 

認知は、生前はもちろん遺言でもおこなうことができるため、子の父が亡くなってからなされる場合もあります。遺言による認知をした場合、遺言執行者が認知の手続きを行います。

 

相続税には基礎控除額が定められており、その計算方法は次のとおりです。

 

相続税の基礎控除額=3,000万円+600万円×法定相続人の数

 

相続税は、遺産や一定の生前贈与など相続税の課税対象となる財産総額からこの基礎控除額を控除し、残った額に対して計算されます。つまり、相続税の基礎控除額が増えれば増えるほど、支払うべき相続税額も減るということです。

 

ここで認知に話を戻すと、亡くなった方(「被相続人」といいます)が1人の子を認知すると、被相続人の子が1人増えることになります。被相続人の子は原則として相続人に該当するため、子が1人増えるということは法定相続人も1人増えるということです。

 

つまり、もともと子がいた被相続人が認知をして相続人が増えれば、その分だけ相続税の基礎控除額が増え、相続税額が減ることとなるわけです。

 

こうしたことから、いったん相続税の申告をした後で認知がなされた場合には、更正の請求をすることで相続税の還付を受けられる可能性が高いといえます。

 

遺留分侵害額請求がされた場合

遺留分とは、子や配偶者など一定の相続人に法律上取得することが保障されている相続での最低限の取り分を指します。遺留分を侵害した遺言書であっても作成することはでき、他の要件を満たす限りは有効です。

 

しかし、財産を多く受け取った人に対して遺留分を侵害された相続人から「侵害した遺留分相当の金銭を支払って欲しい」と請求がなされれば、遺留分の侵害額等について争いが生じる場合はあるものの、原則として侵害額相当額を支払わなければなりません。この請求のことを、遺留分侵害額請求といいます。

 

以前は「遺留分減殺請求」と呼ばれていましたが、現物での返還から金銭の請求へと法律が改正されたことで、名称も変わりました。遺留分侵害額請求の期限は、相続の開始と遺留分侵害の事実を知ってから1年間です。ただし、これらを知らないまま期間が過ぎた場合でも、相続開始から10年が経過すると遺留分侵害額請求権は消滅します。

 

一方、相続税の申告期限は被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10ヵ月以内です。そのため、相続税の申告をした後で遺留分侵害額請求がなされる可能性もあるということです。

 

さて、相続税は、その相続で納めるべきトータルの税金を、実際にその相続で財産をもらった人がもらった割合で按分して支払うことが原則です。

 

たとえば、その相続で支払うべきトータルの相続税額が1,000万円であり、長男が遺言で全財産を相続したのであれば、この1,000万円はすべて長男が支払うこととなるでしょう。しかし、二男から長男に対して遺留分侵害額請求がなされて、二男の遺留分である遺産の4分の1相当の金銭が長男から二男へ支払われた場合には、本来払うべきであった相続税額は次のとおりです。

 

  • 長男の相続税額:トータルの相続税額1,000万円×(1-1/4)=750万円
  • 二男の相続税額:トータルの相続税額1,000万円×1/4=250万円

 

つまり、簡易的にいえば、二男は支払うべきであった250万円の税金を払っていない一方で、長男は250万円(=1,000万円-750万円)を多く払い過ぎている状態となります。この場合には、二男は期限後申告にて250万円を追加で納税し、長男は更正の請求をして過大な納税分の還付を受けることとなります。

 

未分割だった遺産が分割された場合

相続税を正しく計算するためには、申告までに誰がどの遺産を相続するのか決まっている必要があります。しかし、さまざまな事情により、相続税の申告期限までに遺産分割協議がまとまらない場合もあるでしょう。

 

この場合であっても原則として申告期限が延びることはなく、申告期限までに申告と納税をしなければなりません。この場合には、いったん仮の内容で申告と納税を行います。

 

その後、遺産分割協議がまとまった場合には、分割の結果当初の納税額よりも税額が増えた人は修正申告をして追加の納税を行い、当初の納税額が本来の納税額よりも過大となった人は更正の請求をすることとなります。

 

また、遺産分割がされていない時点での仮の申告では、代表的なものとして次のような特例の適用を受けることはできません。

 

  • 小規模宅地等の特例:被相続人の自宅の土地や、被相続人が事業に使用していた土地を相続する場合に、一定の要件を満たすことで、相続税を計算する際の土地の評価額を最大8割減で評価することができる特例
  • 配偶者の税額軽減:被相続人の配偶者が相続した財産のうち「1億6,000万円」と「配偶者の法定相続分相当額」のいずれか大きい額までは相続税がかからない特例

 

これらの特例の適用を受けたい場合には、本来の申告期限までに仮の申告と合わせて「申告期限後3年以内の分割見込書」を提出したうえで、遺産分割の日の翌日から4ヵ月以内に更正の請求をすることとなります。

 

遺贈に関わる遺言書が発見された場合

 

相続が起きて遺産分割協議や相続税の納税が済んだ後で、遺言書が見つかることがあります。この場合、遺言書の内容によっては各人の納税額が変わるため、更正の請求の原因となります。

 

たとえば、法定相続人である配偶者と長男が自分たちだけが相続人だと考えて遺産分割協議と相続税申告をしたものの、後から発見された遺言書に遺産の一部を姪に遺贈する旨が記載されていた場合をイメージすると良いでしょう。

 

姪が遺産の一部を取得する以上、配偶者と長男が相続できる財産は減少します。これにより妻や子が支払うべき相続税も減り、更正の請求をすることで税金の還付を受けることが可能です。

 

一方、姪は受け取った財産にかかる分の相続税を新たに申告し、納税しなければなりません。

 

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Authense法律事務所 弁護士

神奈川県弁護士会所属。一橋大学法学部法律学科卒業。
相続および不動産法務を中心に数多くの案件を取り扱う。不動産に関する知見を活かし、相続人が30人以上の案件など、複雑な相続案件の豊富な解決実績を有する。また、離婚案件についても高額の婚姻費用が認められた案件など多数の実績がある。
依頼者に寄り添いながらも第三者的な視点に立った助言を行うことをモットーとしており、迅速な対応による早期解決で依頼者の利益を最大化することを心がけている。

Authense法律事務所(https://www.authense.jp/)
Authense遺言・遺産相続(https://www.authense.jp/souzoku/)

著者紹介

連載Authense法律事務所の堅田勇気弁護士が解説!もめない相続を実現する方法

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