(写真はイメージです/PIXTA)

相続が発生した場合に、不動産などの遺産について相続人全員の共有名義とするケースもあります。しかし安易に相続人全員の共有名義とすることはあまりおすすめできません。相続に詳しい、Authense法律事務所の堅田勇気弁護士が解説していきます。

不動産を共有相続する(共同名義にする)メリット

他の分割方法と比較して、共有相続を選択するメリットにはどのようなものがあるのでしょうか? 2つのメリットを紹介します。

 

相続人間に公平感がある

共有相続の1つ目のメリットは、遺産を公平に分けやすい点です。たとえば、相続財産が1つの不動産しかなく、かつ代償分割や換価分割といった方法も選択できないような場合であっても、共有とすることで平等な遺産分割をすることができます。

 

収益不動産であれば収入も平等に分けられる

共有相続の2つ目のメリットは、遺産である収益不動産から今後得られる収益も平等に分けることができる点です。不動産の賃貸収入は、原則的にはその不動産の所有者が持分に応じて取得することになるため、継続的に得られる収入も平等に分けることできます。

不動産を共有相続する(共同名義にする)デメリット

共有相続には、デメリットが少なくありません。そのため、いったん共有相続をしてもゆくゆくは後ほど解説をする共有解消を目指すケースが少なくないのです。

 

こうした理由から、遺産相続の専門家は原則として共有相続をおすすめしないことが一般的であるといえます。

 

では、共有相続にはどのようなデメリットがあるのか、それぞれ確認していきましょう。

 

管理や売却の意見が食い違えば膠着状態になる可能性がある

不動産を1人で所有していれば、不動産を売却することや誰かに賃貸することなどはその所有者が単独で決めることができます。

 

しかし、共有の場合には、共有者1人の意見で勝手に決めることができないケースも少なくありません。共有者全員の同意が必要となるケース、共有持分の過半数の同意が必要となるケース、共有者1人が単独で行えるケースをまとめた以下をご覧ください。

 

◆不動産の変更(土地や建物の売却、土地上への建物の建築、建物の大規模な改修や建て替え、抵当権などの担保設定など)

⇒共有者全員の同意

 

◆不動産の管理(建物の(大規模でない)改装、賃貸借契約の解除、賃料の変更など)

⇒共有持分の過半数の同意

 

◆不動産の保存(軽微な修繕など)

⇒他の共有者の同意は不要

 

たとえば、賃貸アパートを長男と長女それぞれ2分の1ずつの共有名義で共有相続したケースを考えてみましょう。相続開始時点では築年数が浅い建物であったとしても、年数が経過した際には大規模修繕などを避けて通ることは困難です。

 

アパートの老朽化に伴い共有者の1人である長男が大規模修繕や建て替えをしたいと考えていても、他の共有者である長女の同意が得られなければ修繕や建て替えを実行することはできません。

 

共有者同士の意見がまとまらないために、いつまで経っても修繕をすることができず、物件が益々老朽化して、結果的に入居者が離れて収益性が大きく低下してしまう可能性もあります。

 

このように、共有者間での意見が食い違えば不動産についての大きな決断をすることができず、膠着状態となってしまうことが懸念されます。

 

また、たとえ共有者である長男と長女の関係性が良く、意見の食い違いが起きづらかったとしても、将来いずれかが認知症などとなってしまえば、成年後見人をつけるなど何らかの方策を講じなければ物件の活用が困難になる点にも不安が残ります。

 

他の共有者と日常的に連絡を取る必要がある

不動産を共有している以上は、不動産の管理にかかる費用や固定資産税などもその持分に応じて負担することが原則です。そのため、不動産の管理などにあたって、共有者同士で頻繁に連絡を取り合う必要が生じます。

 

仮に関係性がよくない間柄同士での共有の場合には、このことをストレスに感じてしまう場合もあるでしょう。

 

また、管理費用などをその都度共有者全員が持分に応じて支払うことは実務的に煩雑であるため、通常は共有者のうちの1人が代表して支払い、後から費用を請求する場合が一般的です。しかし、他の共有者に請求してもなかなか支払ってもらえないなど、結果的に負担が一部の共有者に偏ってしまう可能性も否定できません。

 

さらに、たとえば管理会社を入れていない場合には、入居者からのクレーム対応や共用部分の清掃などの実働的な負担も、原則として不動産の所有者が負うこととなります。しかし、一部の共有者のみがこうした負担を負い、他の共有者の協力が得られない場合もあるでしょう。

 

こうしたことから不公平感がつのり、さらなるトラブルの火種となる可能性もあります。

 

世代交代で権利関係が複雑化する

共有相続の最大のデメリットは、世代交代で権利関係が複雑化しかねない点です。

 

特に土地は、建物と違って老朽化により消滅することはないため、共有者が亡くなった場合には必ず相続が発生します。

 

仮に長男と長女が物件を共有している場合、その後年月が経過し、長男や長女も亡くなると、その後は長男の妻や子と長女の夫や子とが当該物件を共有することになってしまいます。

 

共有者が増えれば増えるほど、また共有者間の関係性が遠ければ遠いほど物件の管理や売却などの際に同意を得ることが難しくなり、非常に活用しづらい不動産となってしまうことでしょう。

 

共有者が広がってしまえば、次で解説をする共有の解消もよりいっそう困難となります。

 

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