世界各国で中国との戦いが始まっている
中国との戦いがすでに始まっていることを知らない人は多い。中国共産党の中央統一戦線工作部(以下、中央統戦部)の工作(統一戦線工作)のことを知っている日本人は少ないと思う。中央統戦部についてはいままで語られることが少なかったからだ。私は中央統戦部と統一戦線工作を多くの人に知ってもらわなければいけないという使命感をもって連載を書いた。
この統一戦線工作は、オーストラリアのクライブ・ハミルトンの著書『Silent Invasion(静かな侵略)』(翻訳は『目に見えぬ侵略』〔山岡鉄秀監訳 飛鳥新社刊〕)により一躍有名になった。
統一戦線工作は、中国国内のみならず、最近は国外においても強化されている。当然ながら日本も工作の対象になっているが、オーストラリアに対する工作は集中的におこなわれた目立つものであり、オーストラリアは長い間、中国の「静かな侵略」の主要なターゲットになっていた。
同国の歴代首相の多く(ボブ・ホーク、ポール・キーティング、ケビン・ラッドなど)は首相退任後に中国に取りこまれて親中派になり、中国の国益の実現に貢献する存在と化してしまった。彼らは、以下のような発言をしている。
▶中国の台頭はオーストラリアにとっていいことばかりであり、自由民主主義と全体主義といった、二者択一の発想は誤りである。
▶中国への抵抗は無益であるか、抵抗すべきものは何もない。
▶南シナ海はそもそも歴史的に中国のものであり、中国はその地域におけるかつての支配的地位を取り戻しつつあるにすぎない(1991年にオーストラリアの首相に就任したポール・キーティングの発言)。
▶中国をなだめることがオーストラリアの経済的利益になり、オーストラリアは報復に対して脆弱である(オーストラリア外務貿易省の基本姿勢)。
▶米国は、中国と対立する国を支援しには来ない。そうであれば、中国に抗うことの意味はどこにある?
この親中国の流れが変わったのは、スコット・モリソン(2018年8月~22年5月)が首相に就任してからだ。とくに大きかったのは新型コロナの蔓延である。オーストラリア人が新型コロナを機に中国が仕掛ける「静かな侵略」の脅威に覚醒したのだ。この静かな侵略に対して堂々と戦っているオーストラリアは日本のいいお手本になる。
日本も統一戦線工作のターゲットになっていることを強調したい。この工作は、日本の政界、経済界、メディア、アカデミア(学界)、中央省庁、芸能界、宗教界、自衛隊、警察などあらゆる分野に浸透している。
外国資本が自衛隊や海上保安庁の基地周辺の不動産や北海道などの広大な土地を買いあさり、日本の団地に中国人が大勢住むようになり、その団地が彼らに占領されかねない状況になっていることなど、工作の例は枚挙にいとまがない。
さらに例を挙げよう。日本には、日本人学生16人に対して167人の中国人留学生が学ぶ高校がある(2018年当時)。まさに大勢の中国人留学生により占領された高校だが、NHKの『おはよう日本』が2018年に紹介した、宮崎県の日章学園九州国際高等学校だ。同校の校長は、「日本人の生徒を集めるのが難しい。中国が一番近い国ではありますし、中国の子供たちが来てくれれば、学校経営は成り立つ」と説明している。
ここまでしないと高校が生き残れないのである。その背景には、地方で日本人の減少が急速に進んでいるという事実があるという。
また、北海道東川町は、人口減少対策として町が自ら留学生集めに乗りだし、人口を増やすことに成功しているという。町が授業料を半分負担し、寮の家賃を補助し、毎月8000円分の買い物カードを付与し、全国で初めて町自らが日本語学校を開設したという。
町がここまで力を入れるのは、財政上のメリットがあるからだ。人口に応じて国から配分される地方交付税が魅力的で、東川町では約200人の留学生が住んでいるため、4000万円を確保できるという。一方で、留学生のほとんどが、卒業後、町を離れてしまうそうだ。
短期間しかいない留学生を呼びこむことで人口を増やし、地方交付税を増やすという取り組みは問題である。そう思うのは私だけだろうか。
日本人の人口減少を補うために、いびつな形で外国人、とくに中国人に過度に依存してしまうことにはリスクがあると思う。トロイの木馬のように、統一戦線工作の一環として日本に送りこんだ(日本の学校や町が招き入れた)中国人が、日本を着実に内部から侵略する事態になる可能性はあると思う。