(※画像はイメージです/PIXTA)

本記事は、西村あさひ法律事務所が発行する『ロボット/AIニューズレター(2022/5/9号)』を転載したものです。※本ニューズレターは法的助言を目的とするものではなく、個別の案件については当該案件の個別の状況に応じ、日本法または現地法弁護士の適切な助言を求めて頂く必要があります。また、本稿に記載の見解は執筆担当者の個人的見解であり、西村あさひ法律事務所または当事務所のクライアントの見解ではありません。

6. 消費者保護法(景品表示法等)

メタバースにおいて、一般消費者に対して商品・サービスを提供する場合には消費者保護関連の法律が問題となります。消費者保護関連の法律としては、消費者保護法、特定商取引法(特商法)、景品表示法(景表法)があります。ここでは検討を要することが多い景表法について取り上げます。

 

(1)景表法

メタバースでは、ユーザ数を増やすために何らかの特典を与える場合もあり、その場合には、景表法が問題となります。

 

景表法は、①顧客を誘引するための手段として、②事業者が自己の供給する商品・サービスの取引に付随して提供する、③物品、金銭その他の経済上の利益を「景品」とし、この景品を提供する行為について、景品の金額の上限について規制を設けています。

 

提供できる景品の金額の上限は、(a)商品・サービスの利用者に対して、くじ等の偶然性、特定行為の優劣等によって景品類を提供する一般懸賞、(b)商品・サービスの利用者に対し、一定の地域や業界の事業者が共同して景品類を提供する共同懸賞、(c)懸賞によらず、商品・サービスを利用したり・来店したりした人にもれなく景品類を提供する総付景品のいずれかに該当するかによって異なってきます。

 

例えば、無料サービスのメタバースにおいて、ログインした人全てに対して、ログインボーナスとして仮想アイテムを与える場合には、総付景品として上限200円の制限がかかるのかといったことが問題となります。

 

[図表1]景品等の上限額

 

(2)イベントと景表法

景表法は、意外なところで制約になることがあります。メタバースで、ゲームのトーナメントを開催し、優勝者に対して懸賞金を与えることを企画した場合に、この懸賞金が、優勝者に対する報酬か、一般懸賞としての景品かが問題となったことがあります。もし、一般懸賞だとすると、懸賞金として10万円までしか出せなくなってしまい、そのようなトーナメントには、人気のあるプレーヤーは参加しなくなり、トーナメントは盛り下がってしまいます。

 

この点、消費者庁は、①プロライセンス選手に限定するケース、②資格制限を設けず、一定の方法で参加者を限定した上で大会等の成績に応じて賞金を提供するケースを取り上げ、いずれのケースも、「参加者への賞金の提供は、景品表示法における景品類の制限の趣旨の潜脱と認められるような事実関係が別途存在しない限りにおいては、運用基準第5項(3)に規定する『仕事の報酬等と認められる金品の提供』に該当し、『景品類の提供に当たらない』」と回答しています※1

 

※1 消費者庁「令和元年9月3日消費者庁表示対策課長作成『法令適用事前確認手続回答通知書』」

 

しがたって、この回答に沿う限りは、優勝者に対する懸賞金は報酬として、上限を設けなくても良いことになります。

 

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福岡真之介

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