(※画像はイメージです/PIXTA)

本記事は、西村あさひ法律事務所が発行する『ロボット/AIニューズレター(2022/5/9号)』を転載したものです。※本ニューズレターは法的助言を目的とするものではなく、個別の案件については当該案件の個別の状況に応じ、日本法または現地法弁護士の適切な助言を求めて頂く必要があります。また、本稿に記載の見解は執筆担当者の個人的見解であり、西村あさひ法律事務所または当事務所のクライアントの見解ではありません。

本ニューズレターは、2022年5月9日までに入手した情報に基づいて執筆しております。

 

本ニューズレターでは、「メタバースにおける法律と論点(上)」に続いて、メタバースの法的問題について外観します。

4. 金融規制法

メタバースでは、ユーザがコンテンツを作成して販売したり、購入したコンテンツを転売するといった経済活動をすることを認めるものもあります。ユーザがコンテンツを作成・販売したりするエコシステムがあることは、ユーザに高い自由度があることが望ましいメタバース的世界観に沿ったものと言えますので、そのようなエコシステムを持ったメタバースが増えていくものと予想されます。デジタル・コンテンツが経済的価値を持つようになると、それはデジタルの資産であると言えます。

 

そして、デジタル資産が金融規制の対象となる金融商品やサービスに分類される場合には、それらの規制が適用されることになります。

 

デジタル資産取引に関連する金融規制の主なものとして、①暗号資産に当たる場合には資金決済法、②有価証券に当たる場合には金融商品取引法、③前払式支払手段に当たる場合には資金決済法、④為替取引に当たる場合には銀行法が適用されることになります。

 

(1)暗号資産

暗号資産としては、ビットコインやイーサリアムが著名です。資金決済法においては、暗号資産として、1号暗号資産と2号暗号資産があります。1号暗号資産とは、①物品・役務提供の代価の弁済として不特定の者に対して使用でき、かつ不特定の者との間で購入・売却をすることができること、②電子的に記録された財産的価値であって、電子情報処理組織を用いて移転することができること、③本邦通貨、外国通貨及び通貨建資産に該当しないことの全てに当たるものを言います(資金決済法2条5項1号)。

 

2号暗号資産とは、不特定の者との間で、1号暗号資産と相互に交換できるものであって、②及び③の要件を満たすものを言います(資金決済法2条5項2号)。

 

デジタル資産は、基本的に②③の要件を満たすので、デジタル資産が1号暗号資産に該当するかは要件①が問題となります。不特定の者と使用・購入・売却できないものは1号暗号資産に該当しませんが、2号暗号資産に該当するかを検討することになります。デジタル資産が暗号資産に当たる場合には、資金決済法による規制を受けます。

 

(2)有価証券

有価証券とは、株式が典型例ですが、金融商品取引法2条1項及び2項に定義されているものであり、概ね事業からの収益を分配する性質を有するものがこれに当たります。

 

デジタル資産が有価証券に当たる場合には、金融商品取引法による規制を受けます。

 

(3)前払式支払手段

前払式支払手段とは、プリペイドカードが典型例ですが、①金額等の財産的価値が記載または記録されること、②金額または数量等に応ずる対価を得て発行される証票等、番号、記号その他の符号であること、③発行者または発行者の指定する者に対する代価の弁済に使用することができるものの全てに当たるものを言います。

 

デジタル資産が前払式支払手段に当たる場合には、資金決済法による規制を受けます。

 

(4)為替取引

為替取引とは、隔地者間で資金を移動できる取引をすることを言います。デジタル資産が金銭による払戻しが可能である場合には、デジタル資産を使って隔地者間で、資金を移動することが可能となるため、為替取引に当たるとされる可能性があります。

 

デジタル資産の取引が為替取引に当たる場合には、銀行法による規制を受けます。

 

(5)NFTと金融規制法

NFTについても、上記の金融規制を受けるかが問題となります。どのような金融規制を受けるかはNFTの設計次第ですが、典型的なNFTでは、上記の金融規制のうち、暗号資産に当たるか否か(=資金決済法の規制対象となるか)が問題となります。

 

この点、NFTは不特定の者に対して使用できるものではないため、1号暗号資産には当たらず、暗号資産と交換できるとしても、決済手段として利用しない限りは、2号暗号資産にも当たらないと考えられています。ただし、ユーザから見て他と区別のつかないNFTが多数発行されている場合には、決済手段として利用できるものとして、暗号資産に該当すると判断される可能性がある点には留意が必要です。

5. 刑法(賭博罪)

メタバースではユーザの経済活動が重要ですが、サービスの中で、勝敗を楽しむというゲーム的要素と、お金を儲けるといった経済的要素が結びつくと必然的にギャンブル的な要素が生じてくると言えます。そこで、メタバースにおいて、提供する商品・サービスの魅力を高めたり、ユーザを勧誘するための施策のなかに、ギャンブル的な要素が入ってくることも考えられます。もっとも、そのような施策については刑法の賭博罪・賭博場開帳等図利罪に違反しないかが問題となります。

 

賭博罪とは、①偶然の勝敗により、②財産上の利益の、③得喪を争い、④失われ得る財産上の利益が一時の娯楽に供するものでない場合に成立します(刑法185条、186条1項)。

 

そして、賭博を行う場所を設けたり、博徒を結合して、利益を図ると賭博場開帳等図利罪が成立します(同条2項)。

 

メタバースの話ではありませんが、例えば、NBAが発行するNFTであるNBA TOP SHOTでは、バスケットボール選手のシュートの瞬間の動画をカード化し、複数枚のカードをパッケージにして、どのようなカードが入っているかわからない状態で販売されています。そして、購入者は、カードをNBA TOP SHOTのサイトで売却できるようになっており、中には高額で取引されるものもあります。そのため、カードの購入者は大儲けできる可能性があり、それがNBA TOP SHOTの魅力の一つにもなっています。

 

このようなNBA TOP SHOTについては、賭博罪の上記の4要件を満たし、賭博罪に該当する可能性があることを指摘する見解もありますが、該当しないとする見解もあります。

 

いずれにせよ、賭博罪該当性の判断基準が明確でなく、賭博罪に該当する可能性がそれなりにあることは、予測可能性を損ね、ビジネスを発展させる障害となります。特に賭博罪は違反した場合には犯罪行為とされることから、コンプライアンスが重視される現代において、企業に与える委縮効果は相当大きいと言えます。賭博罪の保護法益は守るべきとしても、保護法益を侵害しない行為についてまで委縮効果が及ぶことは望ましいものとは言えません。

 

ゲーム的要素と経済的要素が結びつきやすいメタバースにおいて、サービスプロバイダーが安心してサービスを提供するために、どのような場合に賭博罪に該当するかについて明確な基準が設けられることが期待されます。

 

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    福岡真之介

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