(※写真はイメージです/PIXTA)

今や開業は、医師ならば「いつでも、どこでも、誰でも」できる選択肢ではなくなりつつあります。ひと昔前なら上司と喧嘩して即退職し、その3ヵ月後には突貫工事で開業にこぎつけたような話は結構ありましたが…。老木浩之氏の著書『開業する医者の9割が知らないクリニック経営で本当に大切なこと』(日本医療企画)より、開業医を取り巻く現状と今後起こり得る問題について解説します。

今後「開業事情」は大きく変わる

わが国の開業医の現状は、開業は「いつでも、どこでも、誰でも」でき、運用実態は「フリーアクセス」「薄利多売」「プライマリ・ケア」です。自由な参入と開かれたマーケットで、経営者にとってはもってこいの世界でした。唯一の参入障壁は医師資格だけだったのです。しかし、今後、開業要件は、かかりつけ医制度の制度変更に大きく左右される可能性があります。

 

まずは制度変更がまだ起こっていないごく近未来の開業事情を見ていきます。全般的な傾向としては、人口減少と診療報酬の減額によって、新規開業や継承よりも倒産・廃業数が上回り、開業医の数は減っていくはずです。人件費の高騰は2025年から2030年のあたりでピークを迎え、その時期を持ちこたえることができれば、倒産リスクはやや低下します。AI(人工知能)の普及で労働力不足が緩和されるからです。医療機関でも受付事務の仕事はかなりの割合で無人化が進むはずです。

 

とはいえ、クリニックの運営が厳しい状況に変わりはありません。現在の歯科と同様、二極化が顕著になります。医師の雇用を増やし、あるいは共同経営で、多数の医師を抱える大規模化が進むでしょう。

 

大規模化の対極は小規模化です。医師一人、あるいは医師とスタッフ一人のようなランニングコストを極力抑えたクリニックの生き残る道はあるはずです。ただ、このような零細クリニックの強みは低コストという点だけなので、客観的にはぜい弱な運営体制と言わざるを得ません。

 

従来通りの規模の開業、医師一人、スタッフ10人以下の形態は、際だった専門性、もしくはかかりつけ医制度の制度変更が生き残りのカギです。どちらも、周辺クリニックから紹介を受ける診診連携が前提になります。診診連携は病院へのアクセスの難易度が上がるため、今ほど難しくはありませんが、自院の特徴のアピールや院長同士の関係構築など、いわゆる営業活動も必須になるでしょう。

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    本連載は、老木浩之氏の著書『開業する医者の9割が知らないクリニック経営で本当に大切なこと』(日本医療企画)から一部を抜粋し、再構成したものです。

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