一般に、面接採用の成功率は「10%以下」
新規開業時の職員募集では、比較的たくさんの応募があるのが通例です。既存の職員がいない職場で働きたいという思いが強いのかもしれません。しかし、そんな厳選できる状況でも、長く定着してくれる職員が採用できるとは限りません。たとえば、応募者100人中、厳選した6人を採用しても、1年後に残った人はゼロということは十分にあり得ます。
思い入れが強すぎて落ち込む、期待が大きすぎて裏切られる、気負いすぎて落胆する…。これが人事において雇用者・経営者に課せられた試練なのです。しかし、それでもあきらめたり、立ち止まったりすることは許されません。前を向いて頑張るのが経営者であり、その先に大きな喜びがあることを信じて歩むことができる人が成功者です。
「面接で人を見極めるのは困難である」は、プロの面接官の共通認識だとされています。一説によると、面接採用の成功率は10%以下と言われています。面接中に人を見極められると思っている人は、数分でその応募者の人物像をつくり上げてしまっているにすぎません。大切なのは、人は短時間ではわからないと認識することです。
では、面接をあきらめるのか。ここでは、面接とは何かということを正しく理解して、たとえ成功率が7%であっても、8%に上げるにはどうしたらよいのかを考えていきます。
面接における4つの目的
面接は、応募者とクリニックがお互いを評価し合う場です。筆記試験では見抜けない能力や人柄などを見極め、組織で活躍できるかどうかを適正に判定すると同時に、応募者も自分に合った職場か、自分が働いて力を発揮できる職場かなどをシビアな目で判断し、評価します。そのため、好印象な面接にすること、この職場で働きたいと動機づけること、仕事のスキルや協調性を見極めること、職場に合う人材かどうかを判定することが目的となります。
目的①応募者に好印象を与える
どんなに職場の価値を説いても、面接の印象が悪ければ採用辞退につながります。面接そのものが応募者にとって心地よく、よい体験となることが採用成功の前提と言っても過言ではありません。さらに、応募者の背後には数多くの地元住民がいます。つまり、採用活動や面接はクリニックの印象をアピールする営業活動であることを十分に認識すべきです。
応募者が心地よく思える面接にするためには、相手を尊重した応対をすることが重要になります。前項でも触れましたが、面接の受付から帰宅まで一貫して礼節を重んじるように徹底します。面接までの待機場所なども快適に過ごせるように配慮しましょう。
面接ではまず面接官から自己紹介し、面接に来ていただいたことに対しての感謝を伝え、好印象を持ってもらうことが大切です。応募者は「自己開示ができた」「よいアピールができた」「お互いわかり合えた」と感じると、満足度が高まります。
目的②この職場で働きたいと動機づける
新規開業時は院長がビジョンを語ることになりますが、開業後は応募者と同じ職種のスタッフが職場の魅力や目指している医療を語るとよいでしょう。そのほうが説得力は格段に増します。人によって琴線に触れるところが違うので、本来は応募者の仕事に対する思い、将来やりたいこと、人生観などを把握し、その人の価値観に合わせて職場の魅力を伝えるのが理想的です。短時間の面接のなかで価値観を把握するのは容易ではありませんが、それぞれの応募者に合わせて魅力を伝える意識を持つことが大切です。
目的③仕事のスキルや協調性を見極める
仕事のスキルや協調性は面接だけで判断することはできません。特に技術系の作業は経験年数などで判断せざるを得ないこともあります。事務職員ならパソコンのキーボード入力は必須なので、面接以外に時間をとって確認する必要があります。また、仕事を遂行するうえで大切な論理性や理解力、レスポンスなどは面接時の質問で見極めます。
基本的なコミュニケーション能力は、話をするときに人の目を見ているかどうかで判断します。そして、「笑顔」も大切です。接遇・接客の第一は笑顔であり、「患者さんと笑顔で接するように」と伝えただけで誰でも笑顔をつくれるわけではありません。クリニックの受付職員の愛想が悪いという評判が立ったら、それは採用者の責任です。
笑顔は、経営者の精神衛生上もとても大切です。同じ職場で何時間も顔を合わせている職員がニコリともしないのは気持ちがよいものではありません。逆に、職員の笑顔は一服の清涼剤になります。
目的④職場に合う人材かどうかを見極める
職場に合う人材かどうかは、理念に共感できる、他の職員と良好なコミュニケーションが図れる、職場の価値観と一致するの3点で見極めます。
理念には普遍的な価値が含まれていることから誰もが共感できる面があります。つまり、いかようにも言いつくろうことが可能なので、判断は難しいと言えます。そのため、共感できるかどうかよりも、理念をベースに職場で働く覚悟があるかどうかを応募者自身に見つめ直してもらうような働きかけが必要です。残り2点は、新規開業時には見極めが非常に難しく、開業後の採用活動で職場体験などを通して判断することになります。