クレーム内容に目を向け、冷静に受け止めることが大切
患者さんとのトラブルは非常にストレスフルな出来事です。通常のクリニックではトラブル対応をする職員はいないので、医師が対応せざるを得ず、診療中なら診療がストップし、ストレスや焦る気持ちが増幅します。責任者である医師はクレームを冷静に受け止め、真摯な姿勢で臨みましょう。
私が特に問題だと感じることは、患者さんの意見をすぐにクレームと捉えて、患者さんに対して“引く”意識を職員が持ってしまうことです。興奮した患者さんに冷静に対応することは容易ではありませんが、クレームの内容に目を向けることが大切です。職員への注意喚起のために、私が毎月のコラムで書いたものを以下に引用します。
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<ディズニーのように、“すべての患者さん”を特別扱いする>
ディズニーのサービスで優れた考え方はたくさんありますが、私が感銘を受けた1つが、「ゲストを選別しない」ということです。これはゲストを選り好みしないという意味で、どんなに身勝手なゲストであってもあきらめず、そのゲストが満足するまで懸命に努力するということです。お迎えする側が安易にゲストの線引きをしてしまっては、接遇の進歩がなく、おもてなし精神にも反します。医療機関でも見習いたい姿勢だと感じました。
一方、ゲストに対してあまりに対応が違ったり、不公平になることも避けなければなりません。たとえば、待ち時間が長いとクレームを言う人を先に診察して、おとなしく待ってくれている人を後回しにすることは、良識ある患者さんを裏切ることになります。
とても難しい対応になるのですが、公平性を大きく逸脱しない範囲のなかで、一人ひとりの患者さんの要望等に可能な限り応えていくという姿勢が求められています。特定の人だけを特別扱いすることは公平性に反します。しかし、「誰も特別扱いしない」という意識を持ちすぎると、これもまた接遇の後退につながりかねません。では、どうすればいいのでしょう。
「すべての人を特別扱いする」という意識で臨みましょう。全員を特別扱いするということは、「特別扱い」という言葉の定義から外れます。しかし、今や医療は進化し、抗がん剤の選択も遺伝子情報に基づいて個別対応になっています。病院の治療食は昔から個別対応という特別扱いが続けられています。そう! 「すべての人を特別扱い」でいいのではないでしょうか。
最近、問題行動の患者さんが来院されることがあるようです。声を荒げる人もいるようです。しかし、私はウチの全スタッフは、丁寧な対応とやさしい気づかいをもって、患者さんやご家族に接していることを知っています。当法人の2大看板は、質の高い手術と安全第一をベースにしたホスピタリティーあふれる職員の対応です。ウチの職員が、患者さんやご家族の気持ちや尊厳を踏みにじるようなことを絶対にするわけがないこと、大声で罵倒されるような行為をするはずがないことを私は十分に知って信頼していますし、そのことが私の誇りでもあります。
人間なので、ミスをし、それによってお叱りを受けることはあるでしょう。そんなときは素直に謝ることです。私ももちろん、責任をとって一緒に謝ります。
しかし、公平性を著しく欠いたり、理不尽な欲求を受け入れたりすることは、他の患者さんの信用を失うことにもなりかねません。毅然とした態度で臨みましょう。私ももちろん、100%、皆さんの味方です。あなたの後ろには敵は一人もいません。あなたの横や後ろは味方ばかりなのです。
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