(※写真はイメージです/PIXTA)

開業準備のあらゆる面において「節約」を考えることはとても重要です。大幅に資金を節約したい人は、開業支援業者に卸業を兼ねさせてはいけません。お金のかかる交渉は、建築・内装工事、医療機器・什器の購入、電話・水道・ガスなどのインフラの契約などです。本稿では、老木浩之氏の著書『開業する医者の9割が知らないクリニック経営で本当に大切なこと』(日本医療企画)より、「什器購入のポイント」について解説します。

什器の購入では、絶対に卸業者を介在させてはいけない

節約とは、100万円の製品を80万円で買うというような気持ちのよいものではなく(実際にはこのようなことも起こり得ますが)、100万円の見積もりを粘り強い交渉で99万7600円にすることです。つまり、節約とは細かな作業で、「チリも積もれば」という意識を強く持たなくては成就できません。

 

診察室内のデスクや椅子、ごみ箱に至るまで、購入すべき什器は多岐にわたります。カルテ棚や医薬品類の保管棚などを含め、絶対に卸業者を介在させてはいけません。すべて自分で購入しましょう。手間暇は多少かかりますが、それ以上の恩恵が確実に得られます。3つのポイントに分けて解説します。

ポイント①医療用製品の回避

■「“医療用”か、一般家具か」で価格の差は十倍以上

医療用製品の総合カタログを見ても、「医療用」とつくだけで値段が跳ね上がることは少なくありません。たとえば、点滴などを行う電動リクライニングソファは医療機器として認可を受けているものは高額になりますが、機能的にほぼ遜色のない一般家具が10分の1以下の価格で入手できます。待合室の椅子、カルテ棚、医薬品類の保管棚などは一般家具から探すことで大きな節約効果が得られます。

ポイント②一流メーカー製品の回避

■一流メーカーの製品は高額で当然

デスクや椅子は一流メーカーのものは高額です。そして、卸業者に任せていると一流メーカーの製品をリストアップしてきます。高額製品のほうが利益は大きいからです。とはいえ、一流品のほうが信頼性は高いという論理がある程度は成立するはずです。価格を見て、ご自身で判断してください。

ポイント③創意工夫と発想の転換

■点滴スタンドは「S字フック」で代替可能…「代用品」で上手に節約

「これはあのことに使えるんじゃないか」「こうすればこんな機能を持たせることができる」と、ご自身でどんどん創意工夫して節約していくことが大切です。たとえば、点滴セットをつるす台は移動式でなければ、ホームセンターで売っているS字状のフックで代用できます。また、処置室のベッドとは別に患者さんがショックを起こした場合に横になれるソファーベッドを購入するなら、キューブ型のスツールを点在させておいて、いざというときに6つ並べるとベッドの代用になります。

 

まず、通販サイトをチェックすることになるとは思いますが、実際にホームセンターをゆっくり巡ってみることをお勧めします。実物を見てこそ発想が浮かぶことがあるからです。

営業マンや会社との価格交渉に怯んではいけない

メーカーと交渉するか、卸業者と交渉するか、購入者の手間暇は同じです。できるかぎり直販を目指すには最初の電話連絡を自分でするかしないかだけです。購入する医療機器や什器によりますが、交渉次第で数十万円、数百万円の節約につながります。「適正な間隔で点検にきます」「再検討して参ります」といった台詞だけで、約束を守らない営業マンはたくさんいます。世の中は割といい加減な対応で回っている、動いているということです。いくら事前に連絡があっても約束の時間を2度以上守らない人は信用できません。

 

また、営業マンは、「私の名刺にかけて」「まず、お詫びから入らせていただきます」など、客の怒りを鎮めたり、窮地を切り抜けたりするための殺し文句を持っています。医者はそんな言葉を鵜呑みにしてはいけません。黙ってしまっては思うツボです。商取引上、何の意味もない言葉であることを指摘して、その後の交渉を進めるべきです。

 

私の業者との交渉経験を披露します。購入した医療機器が故障し、その修理代の見積もりを卸業者が持ってきました。その見積価格に納得がいかなかった私はその卸業者に見積価格の見直しを依頼しました。しかし、その卸業者は、「これ以上の交渉はメーカーと直接してください」と言うのです。

 

私は経験から卸業者にありがちなその台詞を十分に予測していました。そこで、医療機器を納入するだけなら運送業者で十分だということ、購入時に利益を得ているのだから、その後のメンテナンスに責任を負うのは当然だということを指摘して、「こちらの立場に立って、あなたが再度、交渉しなさい」と伝えました。そして、その卸業者がメーカー側と話をつけ、一件落着となりました。その後、その卸業者とは十数年以上付き合っていますが、そのときの私の言葉を忘れることなく、対応していただいています。

 

 

もう1点、指摘したいと思います。会社員(営業マン)は会社の論理で動くということです。まあ、極めて当たり前のことなのですが、そうした論理があまり働かない医者にとっては不思議な世界です。

 

A社とB社から医療機器のアイミツ(相見積もり)をとりました。A社が107万円、B社が100万円でした。私はA社の機器を気に入っていたので、A社に「100万円に値下げをしたら購入する」と伝えました。しかし、拒否されました。私がB社の機器を購入したことは言うまでもありません。最初から値下げは最大何パーセントまでという決まりがあるのか、営業マン本人が検討もせずに断ったのか、上司レベルで拒否されたのかは不明です。しかし、常識的に考えて、数十万円の利益を放棄することは私にとって大きな驚きでした。

 

以上はほんの一例です。営業マンと交渉していると、会社の論理で動くことによって会社の利益が損なわれていると感じることが少なくありません。私たち医者は、営業マンや会社に対して臆することなく、怯むことなく交渉を進めなければなりません。もちろん、品格を忘れることなく。

 

 

老木 浩之

医療法人hi-mex 理事長

 

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本連載は、老木浩之氏の著書『開業する医者の9割が知らないクリニック経営で本当に大切なこと』(日本医療企画)から一部を抜粋し、再構成したものです。

開業する医者の9割が知らないクリニック経営で本当に大切なこと

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老木 浩之

日本医療企画

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