戸籍謄本を取得して相続人を確定する
相続人の確定に必要な戸籍謄本の取得方法と読み取りのポイントをご紹介します。
戸籍謄本は本籍地の市区町村役場で取得
亡くなった人の戸籍謄本は、本籍地の市区町村役場の戸籍担当窓口で申請して取得します。本籍地がわからない場合は、故人が住民登録していた市区町村役場で本籍地の記載がある住民票の除票の写しを取得して調べることができます。
故人の出生から死亡まで連続した戸籍謄本が必要
相続人を確定させるためには、故人の出生から死亡まで連続した戸籍謄本が必要です。市区町村役場の窓口で「相続に使用するため出生から死亡までの戸籍謄本が必要です」と申し出れば取得できます。
ただし、結婚や転籍で本籍地の市区町村が変わっている場合は、変わった後の戸籍謄本しか入手できません。それより前の戸籍謄本は、前の本籍地の市区町村役場で取得することになります。
前の本籍地は戸籍謄本に記載されている内容を手掛かりに確認します。市町村合併で本籍地の市町村がなくなってしまった場合は、合併後の新しい市町村の窓口で戸籍謄本を取得できます。
本籍地が複数回変わっている場合は、そのつど前の本籍地を探してそれぞれの市区町村役場で戸籍謄本を取得します。
戸籍が焼失するなどして出生までさかのぼることが難しい場合は、10歳前後までさかのぼればよいでしょう。これより幼い年齢では婚姻ができず、子供が生まれることも考えにくいためです。
将来は本籍地以外の市区町村でも戸籍謄本が取得可能に
2019年5月に戸籍法が改正され、2024年をめどに本籍地以外の市区町村でも戸籍謄本が取得できるようになります。戸籍謄本の取得手続きを1か所で済ませることができ、負担が軽減されます。
◎戸籍謄本は1通ごとに手数料が必要
故人の出生から死亡まで連続した戸籍謄本は、本籍地が変わっていなくても何通かに分かれることが一般的です。
現在の戸籍謄本のほか、戸籍の書き換えが行われたときの古い戸籍の謄本である改正原戸籍謄本や、全員が戸籍から除かれて空になった戸籍の謄本である除籍謄本も発行されます。
戸籍謄本の発行手数料は下記のとおり定められていますが、これは1回の手続きごとの金額ではなく1通あたりの金額です。
- 戸籍謄本:450円
- 改製原戸籍謄本・除籍謄本:750円
故人が高齢で戸籍改製や転籍が多かった場合は、それだけ手数料が多くかかってしまいます。兄弟姉妹が相続人になる場合では、故人に加えて両親の出生から死亡までの戸籍謄本も必要になるため、手数料が1万円にのぼることもあります。
戸籍謄本をもとに家族関係を確認
故人の出生から死亡まで連続した戸籍謄本を取得すれば、それをもとに故人の家族関係を読み解き、誰が相続人になるかを確定させます。誰が相続人になるかの決まりは、「1.誰が相続人になるのか?法定相続人の範囲」でお伝えしたとおりです。
主に、認知した子供、前妻(前夫)の子供、養子を含めて子供が何人いるかを確認します。離婚した場合でも子供との法的な親子関係は続いていることに注意が必要です。
戸籍謄本を読み取るときは新しいものから古いものへさかのぼっていくとよいでしょう。新しい戸籍謄本はコンピューターから出力される横書きの書式で、古いものは縦書きの書式になっています。さらに古いものは手書きで書かれたものになります。
- 戸籍謄本に「改製」の記載があれば、それは法令の改正やコンピューター化によって作りかえられたものなので、一つ前の戸籍謄本(改製原戸籍謄本)を参照します。
- 「転籍」または「転籍届出」の記載があれば、転籍前の市区町村で取得した戸籍謄本を参照します。
- 「婚姻」または「婚姻届出」の記載があれば、婚姻前に入っていた父母の戸籍の戸籍謄本を参照します。
古い戸籍謄本の読み取りは専門家に依頼を
故人が高齢で亡くなって戦前の戸籍謄本がある場合は、司法書士など専門家に内容確認を依頼した方が無難です。
古い戸籍は手書きで記録されていて、かな書きはカタカナ表記、漢数字は難しい字体であるなど難解になっています。さらに、現在とは異なり家督相続が基本とされていたため、相続関係を読み誤る可能性もあります。
戸籍調査は専門家に依頼できる
戸籍謄本の取得や内容の読み取りなどの戸籍調査は専門家に依頼することができます。弁護士や司法書士などの専門家に依頼すると数万円程度の報酬がかかりますが、簡単かつ正確に相続人を確定することができます。
特に次のような場合は、戸籍調査を専門家に依頼するようおすすめします。
- すでに死亡している相続人がいる場合
- 兄弟姉妹が相続人になる場合
- 故人が結婚と離婚を繰り返していた場合
相続人の確定に役立てるため、故人の家族関係を一覧表にまとめてもらえる場合もあります。
相続人が確定しないと相続手続きを進めることは出来ません。役所に赴く時間をあまり取れない方や古い戸籍謄本(改製原戸籍謄本)の読み解きに自信がないという方は特に、専門家に依頼すると良いでしょう。