(※写真はイメージです/PIXTA)

「事業承継前の会社の磨き上げ」「相続で分散した株式・事業用資産の買い取り」「相続税の支払い」「事業承継後の経営改善・改革」など、事業承継の前後には、多くの資金が必要になります。どのように対策していけばいいのでしょうか。株式会社M&Aナビ社長の瀧田雄介氏が著書『中小企業向け 会社を守る事業承継』(アルク)で解説します。

「経営者保証に関するガイドライン」の活用も効果的です。もともと、後継者の経験・ノウハウが乏しいことから金融機関は事業承継時の経営者保証の解除に消極的でした。ところが、これがスムーズな事業承継を阻害していることから日本商工会議所と一般社団法人全国銀行協会による「経営者保証に関するガイドライン協会」が「経営者保証に関するガイドライン」を策定しました。

 

同ガイドラインでは金融機関に対して、事業承継時の現経営者との保証契約の解除や、後継者との保証契約の必要性などについて検討することを求めています。これに沿って事業者が経営基盤強化などの取り組みを行うことで、金融機関側が経営者の個人保証の解除に応じることがあるようです。

 

瀧田雄介著『中小企業向け 会社を守る事業承継』(アルク)より。
瀧田雄介著『中小企業向け 会社を守る事業承継』(アルク)より。

事業承継計画の立案から始める

本稿では親族内承継の要点を述べてきましたが、何よりも重要なのは、具体的な進め方を定めた「事業承継計画」を策定することです。

 

10年先を見据え自社の中長期的な経営方針、方向性、目標などを定めて、そのなかに事業承継の行動計画を盛り込むのがポイントですが、現経営者が一人で考えるのではなく後継者や親族と一緒に取り組み、ステークホルダーとの関係も考慮しながら進めることです。策定後は関係者とも共有しておくと、協力や信頼関係の維持につながります。

 

事業承継計画では中長期目標を設定のうえ、資産・経営の承継時期を盛り込んだプランをつくります。具体的には経営状況・経営課題などの見える化を通じてわかった自社の現状から、次世代に向けた改善点や方向性を整理します。そして、事業承継後の持続的な成長を実現するために今後の環境変化を予測し、対応策を検討します。


次に進めるのは、現在の事業の維持、事業の転換を図るなど、自社の事業領域の明確化です。それを実現するための戦略を考え、経営者と後継者、会社の行動を設定するなど、事業承継の時期・方法を計画します。

 

さらに、中長期目標の内容について、売上や利益、マーケットシェアといった具体的な指標ごとの目標を設定し、円滑な事業承継に向けた課題を整理しておきます。専門家への相談や資金調達などの要素も入れておくことで、より現実的な計画になっていきます。

 

瀧田雄介著『中小企業向け 会社を守る事業承継』(アルク)より。
瀧田雄介著『中小企業向け 会社を守る事業承継』(アルク)より。

 

瀧田雄介
株式会社M&Aナビ 代表取締役社長

 

 

※本連載は、瀧田雄介氏の著書『中小企業向け 会社を守る事業承継』(アルク)より一部を抜粋・再編集したものです。

中小企業向け 会社を守る事業承継

中小企業向け 会社を守る事業承継

瀧田 雄介

アルク

後継者がいなくても大丈夫!大事に育ててきた会社を100年先へつなぐ、これからの時代の「事業承継」を明らかにします。 日本経済を支える全国の中小企業は約419万社。そして今、その経営者の高齢化が心配されています。2025年…

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