今回は、マンションの「管理規約」のチェックポイントを解説します。※本連載は、須藤桂一氏の書籍『忍び寄るブラックマンション危機とその回避法』(保険毎日新聞社)の中から一部を抜粋し、マンション管理に様々な問題を抱える、いわゆる「ブラックマンション」の概要と、ブラック化の回避方法を見ていきます。

混同しがちな「長期修繕計画」と「大規模修繕工事」

マンションに関してよく使われる用語としては、ほかに「長期修繕計画」と「大規模修繕工事」があります。

 

「長期修繕計画」とは、今後20〜30年間にわたる修繕費用の予測と、修繕積立金の推移を指します。一般的にグラフで表されているものですが、不親切な管理会社だと、小さな字で数字を羅列しているだけの、見るのも嫌になるような資料しか用意されていない場合もあります。

 

一方、「大規模修繕工事」とは、10〜15年程度のサイクルで、マンションの全面に足場を掛け、防水や塗装を行う工事を指します。また、積立金会計からまとまった支出が発生します。この両者を混同して捉えている方も少なくないので、ここもきちんと理解してください。

 

さらに、マンション管理の業界では「管理費等」といういい方をする場合があります。これは、管理費と修繕積立金に加えて、駐車場使用料、駐輪場使用料、専用庭使用料、トランクルーム使用料といった各種使用料が含まれており、これらをまとめて管理組合が区分所有者から徴収する総額のことを「管理費等」と呼んだりするのです。

管理規約はマンションの「憲法」のような存在

管理費と修繕積立金は、住宅ローンと違い、完済して支払う必要がなくなるというものではありません。マンションを所有し続ける限り、支払い続けなければいけないものです。

 

特に、住宅ローンを払い終わった後で会社を退職し、年金生活になったときのことを考えると、管理費と修繕積立金はまるでボディブローのように効いてくる存在になる可能性があります。

 

また、最近の新築マンションでは、「修繕積立基金」という名称で、入居時に一時金をとるところも増えてきています。先ほどもお話ししたように、この修繕積立金は「貯金」にあたるもので、大型マンションでは億単位の桁になるのが一般的です。

 

このように、非常に大きな額になる修繕積立金というものに、ぜひ関心を持っていただきたいと思います。修繕積立金の保管や運用方法について、「誰が、どこで保管し、どのように決定するのか」ということについては、通常はマンションの「管理規約」に書かれているはずですので、ぜひ一度は読んでみましょう。

 

管理規約とは、ひと言でいえばマンションの「憲法」のような存在です。たくさんの居住者が、快適で秩序ある生活を送るためには、一定のルールを定める必要があります。

 

そこで、専有部分・共用部分の範囲とその使用方法、管理費や修繕積立金の定義、管理組合の業務内容や理事会の権限など、管理組合の運営に必要なことについて定めたものが管理規約なのです。

 

そして、もし管理規約に修繕積立金の保管や運用方法についての内容が書かれていなければ、たとえば「修繕積立金の保管と運用は総会の決議事項とする」などという趣旨をしっかりと規定しておくべきです。気がついたら、使い込まれていたり、持ち逃げされていたり、という事態にもなりかねませんし、実際にそういうケースは少なくありません。

 

また、修繕積立金の運用については、「安全性」「換金性」「運用性」などを考慮し、棄損することのないように貯蓄することが求められます。

本連載は、2015年4月21日刊行の書籍『忍び寄るブラックマンション危機とその回避法』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

忍び寄るブラックマンション 危機とその回避法

忍び寄るブラックマンション 危機とその回避法

須藤 桂一

保険毎日新聞社

金融破綻、年金破綻、そしてマンション破綻、著者はこの3つを「日本の三大破綻」と位置付けている。高すぎる管理費が修繕積立金を圧迫するなか、人口が減少していくニッポンで地方のマンションは資産価値を保ち続けることがで…

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