今回は、マンションが破綻するとはどういうことなのか、具体例と共に説明します。※本連載は、須藤桂一氏の書籍『忍び寄るブラックマンション危機とその回避法』(保険毎日新聞社)の中から一部を抜粋し、マンション管理に様々な問題を抱える、いわゆる「ブラックマンション」の概要と、ブラック化の回避方法を見ていきます。

マンションの破綻=「修繕積立金の破綻」

マンションが破綻するとはどういうことなのでしょうか。

 

現在、日本では将来考えられる社会問題として「財政破綻」と「年金・医療費の破綻」が挙げられています。私はそこにマンションの「修繕積立金の破綻」も加わってくると考えています。

 

いずれも、20年後には一世帯当たりで数百万円の負担を強いられる試算がなされているもので、筆者はこれを「日本の三大破綻」と呼んでいます。

 

政府債務が1000兆円を超えているなかで、財政破綻や年金・医療費の破綻に対する試算額に比べれば、修繕積立金の破綻はそれらよりは若干試算額が少ないイメージですが、それでも、一世帯当たりで数百万という桁でお金が足りないという試算をされるものは、そうそうあることではないと思います。

 

ここで「破綻」という少し過激な言葉を使っていますが、それは将来、お金が著しく不足することが見えていて、今の修繕積立金のままだと修復ができなくなり、行き詰まってしまうことを意味しています。

 

それほど管理組合の修繕積立金は、将来逼迫し、ほとんどのマンションがブラックマンション化することが明らかなのです。

現状のデベロッパーの販売計画では当然の帰結

具体的な例で説明しましょう。

 

たとえば、築10年の100世帯のマンションがあるとします。そこの長期修繕計画では、20年後には修繕等の工事費の予測が累計で6億円と試算されていますが、現在の修繕積立金のままでは累計で3億円にしかならないとします。差し引き3億円の赤字で、一世帯あたり300万円の赤字という計算になります。

 

この赤字を解消するために、年額で15万円、つまり月額で約1万2500円の均等値上げをする、という提案が管理会社から出てくることになります。仮に、月額7500円の修繕積立金だった場合、来月から月額2万円に値上げを余儀なくされる、というわけです。実は、このようなマンションがほとんどなのです。

 

均等値上げの場合はこの程度ですが、段階的に値上げをする場合には、値上げ額の増加は少しずつですが、年を経るごとに値上げ額の幅は大きくなっていきます。

 

均等値上げで月額2万円の値上げとなっていたところが、段階的な値上げでは、いずれは3万円や4万円という金額に引き上げる必要がでてきます。さらに、要所要所で一時金の負担も予定されているというマンションも多く見かけます。

 

これは元を正せば、デベロッパーが新築時に安い修繕積立金の設定で販売するために起きていることで、そもそも長期修繕計画自体が破綻しているのです。いい方を換えれば、「破綻すべくして、計画通りに破綻している」といえるでしょう。

 

これまで、私は数多くのマンションを見てきましたが、世の中のマンションの実に9割以上が、このような破綻する計画で作られた長期修繕計画になっているのです。

本連載は、2015年4月21日刊行の書籍『忍び寄るブラックマンション危機とその回避法』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

忍び寄るブラックマンション 危機とその回避法

忍び寄るブラックマンション 危機とその回避法

須藤 桂一

保険毎日新聞社

金融破綻、年金破綻、そしてマンション破綻、著者はこの3つを「日本の三大破綻」と位置付けている。高すぎる管理費が修繕積立金を圧迫するなか、人口が減少していくニッポンで地方のマンションは資産価値を保ち続けることがで…

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