管理組合は、修繕工事を適宜実施することが求められる
マンション管理組合は、区分所有法の第3条「区分所有者は、全員で、建物並びにその敷地及び附属施設の管理を行うための団体を構成し、この法律の定めるところにより、集会を開き、規約を定め、及び管理者を置くことができる」に基づいて構成された組織です。
つまり、区分所有者全員で、自分たちの共有財産であるマンションを共同で維持管理していくための組織で、マンション管理に関するあらゆる役割を有しています。
当たり前のことですが、マンションは区分所有者が日々の暮らしを送る住居であり、大切な財産です。安全・安心で快適な居住環境を確保し、その資産価値を維持するためには、適時、適切な修繕工事をする必要があります。管理組合には、この修繕工事を適宜実施することが求められます。
区分所有者に大きな負担を負わせないことも重要な役割
ところで、みなさんは管理組合がなくなると、どんなことが起こるか想像してみたことがあるでしょうか?
マンションの共用部分の修繕工事は、長い周期で実施されるものが多く、工事の実施時には多額の費用を要します。そんな多額の費用を、工事の実施時に一括で徴収するということは、区分所有者には大きな負担となりますので、区分所有者間の合意形成を困難にしてしまい、場合によっては工事資金が不足し、必要な修繕工事が実施できないという事態にもなりかねません。
こうした事態を避けるために、将来予想される修繕工事に必要な費用を、長期間にわたって計画的に積み立てていくのが、前述したように、大切な財源となる「修繕積立金」で、マンションを長期間、良好な状態に維持していくために必要なものです。管理組合はこの修繕積立金の徴収と管理・運用を行います。
ところが、管理組合がこの修繕積立金の徴収と管理・運用を適切に行えなかったために、大きな問題となった事例がいくつもあります。
たとえば、神奈川県にある1970年竣工の某マンションでは、1985年までの15年間、修繕積立金を一切徴収していませんでした。そして、築15年目に、1回目の大規模修繕工事を行うことになりましたが、当然工事資金はゼロですから、一時金として各世帯300万円ずつを徴収し、工事を行ったのです。
区分所有者にとって、まとまった額の一時金を負担することは非常に重荷ですし、管理組合が全戸からフェアに一時金を徴収するのはとても困難な作業になります。
管理組合には、区分所有者に一時的に大きな負担をかけることを回避するため、均等かつフェアに修繕積立金を徴収し、マンションの修繕工事を適宜実施するという、重要な役割が与えられているのです。
イラスト=田中マコト