今回は、修繕積立金の破綻に向かうマンションを健全化する方法を探っていきます。※本連載は、須藤桂一氏の書籍『忍び寄るブラックマンション危機とその回避法』(保険毎日新聞社)の中から一部を抜粋し、マンション管理に様々な問題を抱える、いわゆる「ブラックマンション」の概要と、ブラック化の回避方法を見ていきます。

破綻に向かう状態を健全化する方法は「2つ」しかない

前回の続きです。マンションが破綻に向かっている状態を健全化させるには、ふたつの方策があります。

 

①収入を増やす。

②支出を減らす。

 

先に挙げた財政破綻、年金・医療費の破綻もロジックはまったく同じですが、このたったふたつしか破綻状態を健全化させる方策がないのが実態です。そして、管理会社はどこも例外なく、①の「収入を増やす」という提案しか持ってきません。つまり、修繕積立金の値上げや一時金の徴収です。

 

考えてみれば、管理会社の社員はサラリーマンであり、①の提案以外を持っていくことができません。②の「支出を減らす」という提案を持っていくということは、会社の利益を減らすことになるわけですから、サラリーマンとしては失格でしょう。

 

②について管理会社から提案があるとしても、せいぜい電気料金やインターネット使用料、あるいは保険料の削減などといった、自分たちの本業である管理委託業務や修繕業務の範囲以外で、金額が小さなものぐらいでしょう。

管理組合と管理会社は「利益相反」の関係にある

ここできちんと理解しておきたいのは、管理会社とユーザーである管理組合とでは「利益相反」の関係にある、という点です。

 

利益相反とは、簡単にいえば「どちらかが儲かれば、どちらかが損をする」という構図のことです。したがって、利益相反の関係にあるなかで、管理組合が管理会社に対して、支出を減らすという提案を持ってくることを望むのは、とうてい無理なのです。

 

ところが、日本人の特性として、「それでも、何かこちらの利益になることを提案してくれるはずだ」というように、淡い期待を抱いている人も少なくありません。

 

けれど、やはり新築販売される当初に金額を定めるマンションデベロッパーのなかで、管理組合の積立金会計が将来的に不足しないよう逆算して、適正な修繕積立金の金額を設定する、そんな顧客の利益を最優先に考える会社は、残念ながら見たことがありません。

 

 

イラスト=田中マコト

本連載は、2015年4月21日刊行の書籍『忍び寄るブラックマンション危機とその回避法』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

忍び寄るブラックマンション 危機とその回避法

忍び寄るブラックマンション 危機とその回避法

須藤 桂一

保険毎日新聞社

金融破綻、年金破綻、そしてマンション破綻、著者はこの3つを「日本の三大破綻」と位置付けている。高すぎる管理費が修繕積立金を圧迫するなか、人口が減少していくニッポンで地方のマンションは資産価値を保ち続けることがで…

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