世の中も自分の人生も、想定通りには進みません。しかし、予想もつかなかった出来事が、予想もしないタイミングで降りかかったとき、適切に乗り切って周囲の信頼を得る人と、何もできずに立ち止まってしまう人がいます。その違いはどこにあるのでしょうか。多忙を極め、想定外の出来事が頻発する医療現場で、多くの人材を育成してきた脳神経外科医が解説します。

変化を乗り切れるのは「能動的に考え、行動できる人」

社会のさまざまなものが急速に大きく変化していく時代に活躍できる人、新しい時代を生き抜く力をもつ人、それはやはり「think about~」で考えられる人、つまり目的意識を持って考えられる人だと思います。

 

変化の時代には、正解は一つとは限りませんから、さまざまな状況を視野に入れながら目的意識をもって考えたほうがいいということです。

 

そのためには、いろいろな職種や業界の人、年齢の違う人、自分とは違う背景をもつ人などに会って話をすることが大事です。

 

録画されたものを見たり聞いたり、本を読んだりしているだけでは、それほど深く考えなくてもすみます。しかし人と会話しているときに「君はどう思う?」と聞かれたら、いろいろなことを考えてなんとか答えをひねり出さなければなりません。何かしら発信をする必要がありますから「think about~」の思考がぐんぐん鍛えられるのです。

 

また、能動的に行動することも重要です。自分から進んで行動してさまざまな経験を重ねていくことで、しくじりを活かせるようになっていくからです。もちろん読書も考え方のヒントや行動のきっかけを与えてくれますが、読んで終わりにするのではなく、次の発信や行動につなげていくことが大切だと思います。

 

特にコロナ禍のような危機のときには、能動的に行動し、自分の言葉で発信しなければ人の信頼を得ることは難しいのです。

 

コロナウイルス感染症拡大下では、多くの人々が苦境に立たされ、大きな不安に陥っています。そうしたなかで各国のリーダーが国民に「一緒に頑張ろう」などと呼びかける機会もたびたびありましたが、やはり対策の根拠を明らかにし自分の思いをしっかり伝えるメッセージには国民の支持が多く集まっていました。

 

特にドイツのメルケル元首相のメッセージは明確で、自分の取った政策が失敗したと分かったときには「今回の規制は間違いだった。意図は正しいが短期間ではできない。私の間違いだ。最終的には私がすべての責任を取る」と、迅速に、分かりやすい言葉で国民に謝罪しています(※)。こうした分かりやすさや覚悟こそ、今の時代に必要なものなのです。

 

※ 2021年3月24日の記者会見

日本人が「自らの思いを発信する」ことがヘタなワケ

それに比べると、日本の政治家はやや発信が苦手です。日本の政治家が謝罪するときには、よく「誠に遺憾だと思います」などと言いますが、どこか他人事で、本当に悪いと思っているのかなという気がして仕方ありません。

 

そもそも、単一民族国家の日本というのは、正確な言葉で表現しなくてもなんとなく相手に伝わる「ハイコンテクスト・カルチャー」に基づいた社会だといわれています。

 

「コンテクスト」というのは、言語で表せない情報ですが、日本では言わなくても伝わるという暗黙知(経験や勘、直感などに基づく知識)があるため、皆が空気を読んで忖度します。

 

でも、日本以外のほとんどの国は「ローコンテクスト・カルチャー」です。きちんと言わなければ相手に伝わらないし、相手の感情にも響きません。

 

日本にも良いところはたくさんあり、それは守っていくべきだと思いますが、この発信方法についてはそろそろ変えたほうがいいのではないかと思います。

 

これだけ国際化が進んでいる時代に「日本に住んでいるのだから、話さなくても分かるはず」はもう通用しません。「話さなくても分かる」ではなく、今何が大事なのか、自分が本当に伝えたいことは何なのかをしっかり考えて、自分の言葉で分かりやすく伝えることが大事です。

 

少なくともこれからの時代に活躍したいと思っているなら、まずは自分の言葉で自分の思いを伝えることを心掛けたほうがいいと思うのです。

 

 

郭 樟吾

脳神経外科東横浜病院 副院長

 

 

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郭 樟吾

幻冬舎メディアコンサルティング

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