修練すべきときに修練できないのは、大きな損失
時々「初めから何もしなければ、失敗もしない」と言う人がいます。
しかし、何もしないということは、得られるものもないということです。失敗から生まれる成功もなければ、偶然の成功も、理由のある失敗もありません。それこそ最も大きな損失です。
以前、僕が若い頃に手術も何もやらせてもらえなかったという話をしたとき、「考えようによってはラクでしたね」と言う人がいましたが、決してそんなことはありません。修練すべきときに修練できないのは大きな損失なのです。
担当する案件が多ければいいという問題ではなく、件数が少なくてもその1回1回を大事にして学ぶという姿勢が重要です。修練の経験を積んでおかなければ腕が磨かれることはないし、しくじった経験がなければいざというときに対処できないため、上の世代になったときに良い指導者にはなれないということです。
だから「担当する案件が少なくてラク」などと言っている場合ではなく、自ら手を挙げてでも修練の機会を得なければ、必ずあとで大きなしっぺ返しを食うのです。これは医療界だけではなく、どの職場でも同じはずです。
挑戦しなければ修練経験も積めないため、いつまでも不安で自分に自信がもてないままの人生になってしまいます。ですから、最も大きなリスクは失敗することではなく、挑戦しないことなのです。
失敗を恐れていては新しい挑戦ができないし、挑戦ができないということは成長もしないということです。
例えば、Amazonが開発した3D対応のスマートフォン「Fire Phone」という製品があります。2014年に大々的に発売されましたが、製品的にも売上的にも大失敗となり、たった1年で生産中止になってしまいました。でも、その失敗から学習したことをのちの「Amazon Echo」や「Alexa」に活かすことができたと、同社の元CEOであるジェフ・ベゾス氏は語っています。
そして彼は2018年度の株主総会の際に発行されたレターでこう書いています。
「会社の規模が大きくなるにつれて、失敗の規模も大きくなる必要がある」(※1)
※1 ジェフ・ベゾスの2018年度の株主総会で発行されたレター
会社の規模が大きくなっているのに、失敗の規模も大きくなっていないのであれば革新的な発明や製品はできないというのです。さらに、Amazonは失敗したら数十億円規模の損失を出すかもしれない大きな挑戦を常に行っているとも書いています。
挑み続ける力が「変化の時代を生き抜く力」に
物事は諦めた時点で失敗になり、続ければ成功する可能性が高くなります。
一度や二度のミスでやめてしまえばそれはただのミスで、失敗と評価されて終わります。成功している人はそんなミスは失敗とはとらえず、その経験を糧にして違う方法を考えます。それが成功する秘訣です。
また仕事でも、勉強でも、何かを習熟する際には、どうしても途中で停滞する時期が出てきます。練習や学習を続けているにもかかわらず、成長が停滞してしまうことを「プラトー(高原)現象」と呼ぶそうですが、これまで右肩上がりだった成長曲線が高原のように水平になり停滞することによります(※2)。この時期にもうダメだと諦めてしまえば、それも失敗という結果に終わります。
※2 ブリタニカ国際大百科事典
でも、成長が停滞する時期もあることを知っていれば、自分には才能がないと必要以上に落ち込む必要はなくなります。
僕も、病院に新しい治療法を導入しようとしてうまくいかなかったときに諦めていたら、その後の仕事への取り組みはまったく違っていたと思います。そこで諦めず、休職後にやり方を変えて再挑戦したからこそ成功につながったのです。何ごともスムーズにはいくわけではありませんから、とにかく諦めないことが肝心です。
まさにそれを体現した著名な人物といえば、ケンタッキーフライドチキンで有名なカーネル・サンダースです。この人もずいぶん紆余曲折の人生を歩んできたそうです。
若い頃から何度も転職を繰り返したのち、40歳過ぎでようやく「サンダースカフェ」という小さなレストランをオープンします。この店は味とサービスが良かったため繁盛しますが、火事になって倒産してしまいました。
その後は運転手向けのレストランで再起を図ってまた小さな成功を収めるものの、新しいハイウェイができたことで車の流れが変わって人が来なくなり、また倒産します。このときカーネル・サンダースに残ったのは、ケンタッキーフライドチキンのレシピだけだったそうです。
でも、このレシピに自信があった彼は、数日間考え抜いた末、レシピを販売してロイヤリティーを受け取るというビジネスを考え出します。自分で店を開く資金がなかったからこそ思い着いたアイデアでした。
でも、この方法もすぐにはうまくいきません。どの店に売り込んでも相手にされず、なんと1009回も相手に断られたといいます。
それでも諦めずに売り込みを続けた結果、少しずつレシピを買ってくれる店舗が増えていきます。そしてアメリカ全土だけでなく、海外にも広がっていき、ついに彼は「1羽につき5セントを受け取る」という画期的なビジネスで大成功したのです。このビジネスを始めたとき、カーネル・サンダースはすでに65歳でした。
「失敗とは、再始動したり、新しいことを試したりするために与えられた機会だ。私はそう信じている」(※3)
※3 『カーネル・サンダースの教え 人生は何度でも勝負できる!』中野 明著、朝日新聞出版
そう語るカーネル・サンダースは、何ごとも始めるのに遅いということはないこと、また途中で諦めなければ成功につながるということを僕たちに教えてくれています。もちろん途中で方向転換が必要なときもありますから、状況を見て臨機応変に考えるべきですが、何でもすぐに諦めていたら決して成功はしないのです。
転んでも、諦めずに起き上がる力。
転んでも、ピンチを好機に変える力。
それが、これからの変化の時代を「生き抜く力」になるのです。
郭 樟吾
脳神経外科東横浜病院 副院長
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