「自分はできる」と思える自己肯定感
■自己肯定感の正体
そもそも自己肯定感とは、自分を肯定できる感覚のことです。と、説明してもピンとこない方も多いかもしれません。実は、私もそうでした。むしろ、「自己否定感」の反対というほうがイメージしやすいです。
自己否定感とは、「自分なんてダメだ」「自分には無理」など、自分を否定する感覚のことです。
つまり、自分を肯定できる感覚とは、「自分は大丈夫」「自分はできる」と思える感覚のことです。
SNSでいえば、Facebookの「いいね!」ボタン、TwitterやInstagramのハートマークを、自分で自分に押せる感覚が、自己肯定感が高い状態に近いです。
■なぜリーダーに、自己肯定感が重要なのか?
特に、リーダーにとっては、自己肯定感を高めておくことは重要です。というのも、リーダーになると、自分の思い通りにいかないことやストレスを抱える場面が多くなるからです。
・自分ひとりでは成果を出せていたのに、チームになるとなかなか成果が出ない
・言いにくいことであっても、上司として部下に言わなければいけないときがある
・よかれと思ってやったことが誤解によってこじれてしまった
・自分のマネジメントですらままならないのに、部下を育成指導するのは荷が重い
・部下と上司という立場の違いから、どうしても軋轢が生じる
こんなとき、自己肯定感が低い上司は、成果や周囲からの評価に一喜一憂して、振り回されてしまうことが多くなります。うまくいっているときは、調子に乗れるので「絶好調!」ということもあります。
ですが、うまくいかなくなったとき、自己肯定感の低い上司は必要以上に自分を責めるか、相手を攻撃するかの二択しかありません。
つまり、自分の思い通りにならなかったときのリカバリーがとても難しいのです。
「やっぱり自分はダメなんだ」「こんなことでつまずくなんて、上司の資格がない」などと自分を攻撃するか、「なんてひどい部下・チームなんだ」と相手を攻撃する。
こうなると、建設的に対応できなくなり、事態はますます悪化していきます。
これに対して、自己肯定感が高い上司は、どんな状況になっても自分の味方でいられます。思い通りにいかなかったときでも、自分や相手を責めるのではなく、
「今回はそういう結果になったんだね」
「部下は、そういう判断をして行動した結果こうなった」
と、ニュートラルに受け止めることができます。
このように結果や状況を一度受け入れることができると、結果や人間関係のストレスも減り、冷静に対処することができます。
また、自己肯定感が上がると、人からの評価があまり気にならなくなります。
「人にどう思われるか?」や「人と比べて優れているかどうか?」ということよりも、「本当はどうしたいか?」「どうしたら実現するか?」に意識が向くようになるのです。
すると、一度や二度の失敗でもめげずに何度でも再挑戦でき、躊躇せずに周囲に協力を求めることができます。結果的に成果も出やすくなっていきます。
このように、自己肯定感が高いか低いかで、マネジメントや意思決定の質が変わってきます。つまり、リーダーには、ある程度の自己肯定感が必要なのです。
コーチングでは、頭や心や体の状態のことを「ステート(State)」と呼びます。そして、「State is everything.――頭や心や体の状態こそがすべて」という言い方もします。
「頭や心や体の状態がよく、『できる』という感覚を持つこと。それが何よりもパワフルなのだ」という意味です。