(※写真はイメージです/PIXTA)

資産家の一族の長男の結婚が決まり、自宅の新築を進めようとしましたが、不動産は亡くなった独身の姉と共有であり、名義変更が必要です。そのためには関西に暮らす甥姪との協議が必要ですが、そこには簡単には解決できない確執がありました。相続実務士である曽根惠子氏(株式会社夢相続代表取締役)が、実際に寄せられた相談内容をもとに、生前対策について解説します。

「母親だけ差別された!」相続放棄も当然のごとく…

1番目の姉の家族とは、関西と東京という居住地の距離の問題もあって疎遠になっていましたが、甥姪との協議は不可欠であるため、山田さんははじめて甥姪に連絡を取りました。しかし、対応は非常にそっけなく、以降は電話にすら出てもらえなくなりました。

 

相談を受けた筆者は、山田さんに代わり、甥姪と連絡を取って面会することになりました。詳しく事情を聞いてみたところ、これまでの親戚づきあいのなかで、長年にわたって鬱積してきたものがあるといいます。

 

「祖父母はとても裕福だったのに、母だけ差別され、結婚のときには援助も受けられず、とても苦労したと聞いています」

 

「祖父母の家に行っても冷たく扱われ、本当に苦痛でした」

 

「祖父母は、叔母と叔父にはずっと生活費の援助をしていたと聞いています。おまけに、祖父が亡くなったときには、当然のように母に相続放棄を迫りました。母の親族とは、今後一切関わりたくありません」

 

その後、甥姪は、直接話したくないという理由から弁護士を立ててきました。そのため筆者は、山田さんも弁護士に依頼するようアドバイスしました。

 

今回の件で問題になっているのは、金銭的なものではなく、これまでの親族との関係性や、祖父や叔母が亡くなったときの山田さんの発言等が原因のようでした。

確執があるなら、遺言書を準備しておくべきだったが…

山田家の親族に確執があり、1番目の姉が亡くなって以降疎遠という事情を考えれば、2番目の姉の遺言書は不可欠だったといえます。

 

残念ながら、弁護士を介した交渉は決裂しました。結局、山田さんは自宅を売却し、相続人間で法定割合通り分けることとなり、山田さん親子は住み慣れた自宅から転居しました。

 

山田さんの2番目の姉のように、配偶者も子どももない方の相続人は親であり、親が亡くなっている場合は兄弟姉妹、兄弟姉妹が亡くなっていれば、兄弟姉妹の子に当たる甥姪が代襲相続人となります。

 

事情により相続人が疎遠な関係になっているのであれば、話し合いが進まないことも想定し、遺言書を残すべきだといえます。遺言書があれば、過去のわだかまりから関係がこじれるといった事態も回避できます。また、兄弟姉妹には遺留分侵害の請求権はありません。

 

山田さんの事例は、生前に適切な対策が取れなかったことが悔やまれます。

 

 

※登場人物は仮名です。プライバシーに配慮し、実際の相談内容と変えている部分があります。

 

 

【関連記事】「遺留分」とは…割合や侵害額請求、“注意したいポイント”|相続税理士がわかりやすく解説

 

 

曽根 惠子
株式会社夢相続代表取締役
公認不動産コンサルティングマスター
相続対策専門士

 

◆相続対策専門士とは?◆

公益財団法人 不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター、retpc.jp) 認定資格。国土交通大臣の登録を受け、不動産コンサルティングを円滑に行うために必要な知識及び技能に関する試験に合格し、宅建取引士・不動産鑑定士・一級建築士の資格を有する者が「公認 不動産コンサルティングマスター」と認定され、そのなかから相続に関する専門コースを修了したものが「相続対策専門士」として認定されます。相続対策専門士は、顧客のニーズを把握し、ワンストップで解決に導くための提案を行います。なお、資格は1年ごとの更新制で、業務を通じて更新要件を満たす必要があります。

 

「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。

 

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    本記事は、株式会社夢相続のサイト掲載された事例を転載・再編集したものです。

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