「働ける妻」に、夫の苦労を理解してもらう
「夫は外で稼ぎ、妻は家を守る」というのは、昭和の家庭では普通でした。けれど、夫の給料が下がる状況では、この生活パターンは通用しづらくなっています。
昭和の高度成長の中では、夫は家庭も顧みずに「企業戦士」として働かなくてはなりませんでした。けれどその見返りとして、会社の福利厚生は充実し、「年功序列」「終身雇用」で退職金や企業年金も充実していて、死ぬまで家族の生活は守られました。
大家族が多かった時代、「企業戦士」の夫を外で十分に働かせるために、妻は、舅や姑、子供の面倒を一手に引き受けました。家事は、今のようにボタン一つで洗濯機が洗濯から乾燥までしてくれ、掃除はルンバ任せというようなお気楽な状況ではなく、妻は朝から晩まで家族のために、身を粉にして働かなくてはなりませんでした。
ですから、昭和の「専業主婦」は超忙しく、働きに出ることなどできませんでした。その代わり、夫の稼いでくるお金で、生活は成り立っていました。
では、今はどうでしょう。
厚生労働省の「国民基礎調査」(2019年)を見ると、昭和のあいだは上がり続けていた世帯年収が、平成になって下がりました。
しかも、この間に「年功序列」も「終身雇用」も徐々に崩れ、50代を過ぎると役職定年で給料がダウンするのが当たり前になっています。
■妻が働くお金以外のメリット
昭和の家庭では、「妻子を食わせるのは夫の甲斐性」と、父親が息子に教えて育てるというケースが多かったので、今の50代には、給料が減って生活は苦しくなってきているけれど、妻に働けとはいえない人が多いようです。
妻のほうも、ずっと専業主婦だった母親の背中を見て育っている人が多いので、結婚したら家庭に入り、「夫に養ってもらうのが当たり前」と思っている人もいる。
しかも、長いあいだ「専業主婦」をしてきたので、働きに出るのが怖い。
けれど、子供の手が離れたら、働きに出る方法を考えたほうがいい。なぜなら、2人で働かないと、豊かな人生が送れない時代になってきているからです。
妻が働くことの大切さは、お金を稼いで家計を楽にするだけではありません。
バブル崩壊以降、夫は会社で過酷な労働に耐え、リストラの恐怖にさらされながらも必死に歯を食いしばり、涙をこらえて働き続けてきました。
ただ、バブル期に結婚退職した妻の中には、未だにバブル期の感覚が抜けず、夫の会社での苦労を知らないという人もいます。けれど、生活感のギャップが大きいままだと、長い老後をお互いに理解し合い、支え合って生きていきづらい。
ですから、妻も働きに出ましょう。働きに出れば、辛い目にも遭うし、嫌な人とも付き合わなくてはいけない。そんな社会の荒波を妻も体験してこそ、会社で悲惨な思いをしてきた夫を理解し、お互い支え合い、心が通う豊かな老後生活を送れるのです。
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