(※写真はイメージです/PIXTA)

欧米で歯並びの美しさが重要視されるのは、「当然の身だしなみ」だからなのですが、もっと突き詰めていけば、歯並びの美しさは「笑った時の美しさ」に影響を与えるから、ともいえます。日米の考え方の決定的な違いはどこにあるのでしょうか。歯科医師の成田信一氏が著書『自分で考え、やり抜く子の育て方』(プレジデント社)で解説します。

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歯列矯正は避けて通れない欧米

■なぜ、歯並びの是非が問われるのか

 

「この歯並び、治したほうがよいでしょうか?」

 

これは私の医院に来る多くの方からいただく質問です。皆さん、矯正したほうがよいのかどうか、悩んでいます。

 

しかし、矯正したほうがよいかどうかは、私が決めることではありません。

 

というのも、歯列矯正は、「しないと命が危ない」というものではないからです。もし、命に関わる状態であれば、「治療したほうがよいかどうか」という議論をするまでもなく、医師は治療をするでしょうし、患者さんもそれを切望するでしょう。

 

ところが歯列矯正は、ある程度文明が進んだ段階で生まれた医療であり、社会的な医療と呼ばれるものです。

 

そのため、必要性という視点で考えると、「絶対必要」と断言することはできません。しかし、グローバル化という視点で考えると、私は「絶対必要」だと考えます。

 

■アメリカでは大学進学率と矯正率はほぼ同じ

 

私が大学卒業後、矯正歯科の医局に入った30年前には、日本で矯正している人はごくわずかでした。一方で、欧米ではとても多いことを知り、驚いた覚えがあります。どのくらい多かったのか、当時の具体的な数字は覚えていませんが、感覚として「多いな」と感じたのは確かです。

 

現在はというと、たとえばアメリカでは、プライベートスクールへ通う子どもはほぼ全員、矯正しています。また、大学進学率と矯正率は、ほぼ同じくらいだといわれています。

 

日本では現在、大学進学率は50%を超えています。アメリカのように、大学進学率と同じくらいの人が歯列矯正をしているとしたら、二人に一人が矯正しているということになります。いかがでしょう? あなたの周りの人たちは、それくらいの割合で歯列矯正をしているでしょうか? そうではありませんよね。いまだに、日本とアメリカの違いは歴然としています。

 

私は大学の医局で働いたあと、矯正歯科医として独立開業したのですが、その際に、マーケティングの世界ではよく知られている、ある話を聞きました。

 

アフリカに靴を売りに行った二人の営業マンの話です。一人の営業マンは、「ここは誰も靴を履いていないから、靴は売れない」と考えました。もう一人の営業マンは、「誰も靴を履いていないから、これからのマーケットが無限にある」と考えた、というものです。

 

どちらの考えで営業活動を行うかは、その企業などの方針によってそれぞれなのでしょうが、私は、「これまで靴を履かなくてやってこられたのだから、今後も靴を履かなくてやっていける可能性が非常に高い」と考えました。

 

これは、まさしく日本の歯列矯正についても当てはまることではないか、と思いながら。

 

日本での矯正率は、私が矯正医を始めた頃に比べて、数%伸びたかもしれませんが、おそらく今でも10%は超えていないでしょう。

 

今後も、微増はするかもしれませんが、アメリカのように大学進学率と同じぐらいまで矯正する人が増えるかどうか……そこは矯正医としては、期待したいところですが、次に挙げる文化的な背景の相違から、なかなか難しいのかもしれないと考えています。

 

一方で、本気で日本が、いえ日本人一人ひとりが、グローバル化を目指すのなら、歯列矯正は避けて通れないものだと確信しています。

 

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※本連載は成田信一氏の著書『自分で考え、やり抜く子の育て方』(プレジデント社)の一部を抜粋し、再編集したものです。

自分で考え、やり抜く子の育て方

自分で考え、やり抜く子の育て方

成田 信一

プレジデント社

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